テイマー・フェレット・オンライン

HIRO

ゲーム始めました

第1話

「弟よゲームをしてみないか?」


 そんな突拍子もない言葉を言いながら僕の部屋のドアは開かれる。

そして決まってそんな傍若無人な者に対する答えはこうである。


「姉さん、いきなりそれだけ言われても意味がわからない、もう少し詳しく、出来うるならば最初からお願いできるかな?」

「うん、今日も丁寧に聞き返す無難な返礼をありがとう弟よ、ではちょっと言葉を考える時間をくれ」


 この少々いや、かなり大雑把で話の要点しか話そうとしない人物は僕の姉である名前は内山美羽うちやまみう去年から都心の大学に通っている。

家族の贔屓目で見ずともその容姿は整っていると言え、スタイルもいい。

フレンドリーかつ積極的な性格は男女問わず友人が多いと聞き及んでいる。

 ちなみに、そんな話の要点しか話さない姉にこうして辟易している僕は

内山光司うちやまこうじ無事受験にも合格し今年から高校に通う事になった新一年生だ。

今は春休みの真っ最中、丁度、中学の勉強の復習をしていたところだった。

 そして、どうやら話の内容がまとまったのかようやく姉さんは口を開き始める。


「VR技術、いわゆるバーチャルリアリティーというものは知ってるか弟よ?ここ数年で急激に発展しその技術は目まぐるしいものだ」

「うん、知ってるよ、それとゲームがどう結びつくのかな?姉さん」

「関係あるのだよこれが、前々からVR技術をゲームに転用するという話はあった。というか、いくつかは開発されて発売されてたりするしね、でも、それはユーザーが求めるものと少々齟齬があった。しかし!とうとうと言うべきかやっとと言うべきかユーザーが求めるVRシステムの開発が成功された! 視覚、聴覚に加え触覚、嗅覚、味覚、そう!五感全てを再現しうる、VRシステムが出来たのだ」

「へぇ、それは凄いね、でも、それと僕がゲームをする理由にどう結びつくのさ?」

「まあ、ここまでは触り及び掴みとしてVR技術の発展について私の感動を話しただけだが、ゲームに誘ったのは別の理由がある、あれは数か月前だ」


 姉は少々思い出す為に黙る、僕はあまり趣味と言う趣味を持たずに15年ではあるが短いながらも人生を送ってきた。

 せいぜいが健康のためのジョギングと勉強に飽きた時にたまに読む小説と触る程度のパズルゲームくらいだ。

 その点、姉は好奇心が強く行動力のある性格がゆえに様々な趣味を嗜んでいる、中でもゲームはかなり熱中している趣味の一つだ。

ゲームのイベントに友人を伴って遊びに行った話をよく聞かされたものだ。

 しかし、なぜ今になって僕を誘ったのだろう、家族に対して趣味を強要する姉ではなかったが。

そろそろ、話の内容がまとまったのか話を始める。


「私は先程話したVR技術を用いたゲームのテスターとして先行プレイをさせてもらっていたんだ。楽しかったよその時の話は省かせてもらうが、まあその時に正式販売時に抽選でテストプレイしたゲームと更に最新機体までもが当たる抽選チケットを貰ったのさ」

「まあ、私は自分をくじ運がない人間だと自負している、抽選チケットに期待せず、予約開始日に先にと機体を購入しゲームの予約をしたさ。だが今回に限っては何故か当たってしまったのだよ、友人に譲ろうかと最初は思って電話したんだが。機体は旧式の五感を完全再現できない物だろうと性能次第で軽く5万を超える、それの最新版ともくればお値段はお察しだ。そんな高額な物を送られては正直困るというのが友人たちの本音だった、だがしかし、だれにも使われずに腐らせておくのも勿体ない! 父は多忙で方々への移動の多い職だ、母はお世辞にも体が強いとは言えないがため渡すのは怖い。そこで白羽の矢が立ったのが弟よ、君なのだ、どうだ?面白くないと感じたならやめても構わない、一度触ってみないか?」


 そういって、言葉を終わらせる、なるほど、どんなゲームかは後で聞くにして僕も今年度から高校生である。

趣味のひとつくらい増やしてみるとしよう、そう思いゲームをすることを承諾する。

すると姉はいい笑顔で部屋から出ていき、機体とゲームソフトを持ってきて僕に渡し、自らは自分の部屋へと戻っていった。

中に入っていたのは、えっと何々………【REALGEAR】読みは恐らくリアルギアだろう?取扱説明書はっと。

あれ、随分ぺらっとしてるな、えっと何々機体を装着するとしばらく初期設定等説明が行われますので指示通りに操作をお願いします。

最近のゲームはこういうのが多いと姉がよく言ってた、ゲームソフトや製品などに説明書が付属されてるという奴だ。

そうと決まれば、僕はさっそく、そのバイクのヘルメットのような少々重たい機械に姉から貰ったゲームディスクを挿入してから被る。

 そういえば、入っているゲームについての説明を聞きそびれた、まぁ、ゲームの取扱説明書を読めば事足りるか。

そんなことを想いながら電源を入れた瞬間、僕の視界は暗転したのだった。

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