ゼノンタース〜未知なる彼女と不思議な学園生活〜

クルクル豆鉄砲

第1話未知なる彼女



まだ外が暗くなるのが早い4月の午後7時、俺は学校終わりに寄り道をした為、帰りが遅くなっていた。


幸い両親は海外でほとんど生活している為、少々帰りが遅くなっても怒られる心配は無い、だからといってゆっくり帰るつもりは無く、俺は帰りに買ってきた雑誌を家でゆっくり読みたいので自宅へ急ぐ。


駆け足で帰っていた俺の前に、いかにも怪しい見た目をしたどうみても季節外れのコートを纏った男が現れた。


男は全身をコートで包み、ハットは顔が見えない様にしているのかは分からないが、深く被りうつ向いている。


この辺は比較的に治安も良く住民にも変な人は居なかったと思うが、男は街頭の下に立ち尽くしておりいかにも不審者であった。


正直余り近付きたくは無かったが、俺は早く家に帰りたかった為、男からなるべく離れた場所をそそくさと駆けていく。


男を通り過ぎた瞬間、へへっ、不気味で気持ちの悪い笑い声が聞こえ、元々男に対しいてある程度恐怖していた為か、俺はその場に止まり振り向いてしまった。


「俺の力を見てみたくないか?」


さっきまでは見えなかっ奴の顔は今では口元がはっきりと見え、不気味で気味の悪いニヤついた表情をしている。


再び男はさっきと同じ質問を繰り返す「俺の力を見てみたくなくないか?」けして聞こえなかった訳では無いが、俺はただ驚き答えるべきかを迷ったいたのだ。


流石に2度目の問いかけになると何かしらの返事をしなくてはいけないと思い、俺は曖昧な返事では無く端的にはっきり返す。


「結構です」


男は反応しない、俺はとにかくこの状況を何とかしたかったので、いちよう返事もした事だし少々怖いが男を背にして走ろうとする。


「遠慮するなよぉ! 見せてやるよぉ!」

声に驚いた俺は慌てて振り向くが男は目の前まで飛び掛って来ていた。


男との距離は元々離れた場所を通っていた為に10m位はあったはずだ、それを一瞬の間に詰め寄って来ていた。


俺は慌てて持っていた鞄を盾のように使うが、余りにも強い衝撃によってそのまま後ろに飛ばされてしまった。


焦った俺は倒れても尚、直ぐにさっきの様に鞄を盾に使用とするが、手には既に鞄はなく、代わりに奴が俺に飛び込んで来た際に持っていたであろうナイフに串刺しにされていた。


人間の身体は不思議な物で頭で考えるより早く身体が動いてしまう事があり、これを反射運動というらしい、俺自身余りにも現実離れした男に対してかなりの恐怖を抱いていた様で、俺は既に男から離れようと走り始めていた。


他にも人間には不思議な事があり、怖い物ほど興味が引かれるのか、自分自信の死のカウントを確認するようにゆっくりと後ろを振り向くと、奴はまださっきと変わらず薄気味悪い笑顔でこっちを見たまま立っていた。


俺が振り向くのを確認すると刃物から鞄を抜き、こちらに向かって走り始めた。


奴が走るのを確認した俺は振り返ってしまった事に後悔しながら加速する。


どれくらい走ったのだろうか、奴を撒くために曲がり角に入ったり、あえて直進してみたり、とにかくできる範囲で逃げつづけると、距離で言えば100mか200mはたまたもっと走ったのかそれとも全然走って無いのか死の恐怖とは恐ろしいもので、思考能力がほぼ失われる。


だが今こうして物事を考えれるようになっている所を見ると、ちょっとは回復したのかもしれない、それか死の恐怖に対して慣れただけなのか、俺は少し先に見えた曲がり角まで全力で走り、壁を背にあたかもスパイ映画のように後ろを確認すると奴の姿は見えなかった。


はじめに飛び掛かって来た時はかなりの瞬発力だったが足はあまり早く無いのか?


とにかく俺は少し安堵したと同時に、こんな事になるなら本など買いに行かずに早く帰れば良かった。


今日は入学式だったのに最悪の日だ。


時は今朝まで遡る。


西暦2150年俺たち人類は進化し続けるといわれていたが、科学は進歩する事なくと《歩みを止めた未来》〈ステイエラー〉と呼ばれていた。


そんな近未来、日本ではこの状況を打破する為にある特別な施設を作った。


それが俺が今日から通う高校、国立科学技術大学付属高校、この学校は科学の進歩の為に作られた為入学者は毎年1,000人程と、かなりの人数が入れるが受験者は2万人近くかなりの倍率である。


それもそのはず、進学率就職率共に100%を誇る名門校、授業では基礎の教科から、クラスごとに、化学や医学、物理学、生物学と、ほかにも様々な学科が存在し、医者など本来であれば大学での6年間の実施がおこならなければ試験にすら受けれない特別な資格などもこの高校では3年間で全ての学科をこなし、試験を受けるようになったり法律ですらこの学校の為に変えるほどの特別な場所である。


そんな特別な学校の入学式なので俺は時間よりもかなり早く来ていた、だがそんな特別な場所だからこそだろう、俺の他にもかなりの人数が既に入学式の会場に集まっていた。


「おいおい、こんな事ありえるのか……」


むしろ俺は遅い方なのだろう、早すぎたと勘違いした自分に少し呆れつつ、刻々と埋まっていく席から空いている場所を見つけて腰を掛ける。


辺りを見ると入学案内に目を通す生徒や読書で教養している生徒も居るが、近くの人と談笑している生徒もかなりいる。


勉強が好きで頭が良い奴ほど、人とは話さず常に勉学に励むばかりかと世間からはそう思われているかもしれないが、周りに同じ様な人間が居れば自然に話し掛けてしまうのかもしれない。


俺自身も何かしようと思ったが、隣に座っていた男子生徒から話しかけられた。


「なぁ、俺は1年の児玉 力也ってゆうんだ。あんたもおんなじ1年生だろう?」


俺に話し掛けてきたのはうっすらと茶色の髪をした社交的な男子生徒であった。


「あぁ、俺も1年の賀上優真という、どうして俺が1年だと分かった?」


彼は俺が来るよりかなり前から居たらしく、その時に1階と2階の反対側が既に埋まって居たらしい、確認したわけでは無いようだが上級生達は我々よりかなり前から座って待って居るらしい、そう言われてみれば確かに下や反対側の生徒は何処か落ち着いている様子であった。


力也はどうよらスポーツ化学科に在籍しているようで、この学校ではかなり特殊なクラスに所属している。


この学校には知性だけではなく運動面や技術面でもかなり進んでいて、いくら頭がいい生徒を集めた所で実用実験や何かを作る際に必要な事が足りていない。


その為ある程度の実力を持ったアスリートの卵や技術者を化学的に育てたり、研究の補助として特待生として受け入れている。


だが特待生は一般生徒とは違いかなりの実力者で無ければ認められないが、彼の社交性や先程の洞察力といった面など彼の優秀が改めてよく分かった。


是非とも仲良くしたいと思い、しばらく談笑をしていると、入学式が始まった。


こんな特別な学校ではあったが式自体はごく普通な物で2時間もしない内に終わりを迎え、各学年事に自分の教室に戻り始めた 。


俺は力也と教室は少し離れてはいるが、教室自体は同じ階にある為少し話していた。


「それにしてもさっきの生徒会長すげぇ綺麗な人だったよな!」


入学式で新入生に向けて挨拶をしていた銀髪で清楚でいかにもお嬢様な外国人ハーフの生徒会長。


「だけど車椅子に乗って来た時は正直驚いたな! あの人2年生って言ってたけど今年も生徒会長になるのかな?」


力也はかなり生徒会長を気に入ったらしい、俺自身も正直あの生徒会長は好印象だった。


「多分立候補するんじゃないか? じゃ無かったらあんな挨拶しないと思うぞ」


「確かに! まさか新入生に向けての挨拶で自分の義足の話しをするなんて、かなり目立っちまうもんな、それにあの最後のセリフは可愛いかったな!」


最後のとは生徒会長が挨拶の最後に可愛く「こんな足ではありますが、困った時は助けて下さい」と優し笑顔で微笑まれては男として見過ごす訳にはいかないだろう。


そんな感じで話していたが、俺と彼はここから別の方に教室があるというので、連絡先を交換し各々教室に向かい始める。


クラスでは担任が来るまでに色々と盛り上がって話しているグループが伺える。


話題はやっぱりさっきの会長の事だろうか、さっきは可愛い生徒会長の話をしていただけだが、彼女の挨拶はどちらかとゆうと演説に近かった。


俺自身、他人の言葉に影響されたのは久しぶりだった。


あれはいくつの時だったろうか、初めて買った科学雑誌で読んだ科学者の言葉以来だなと、昔を懐かしんだ俺は少し遠いがその雑誌が置いて無い為、帰りに隣町まで行くことを決めていた。


俺が昔を懐かしみ寄り道する決断をしたころ、教室には担任がやってきて、今後の予定やクラス委員や部活などの書類を持って来ていたらしく書類を渡された。


一通り終わると担任は時計を確認して、学校案内を初めた。


この学校には教師や生徒その他の用務員や各種関係者を入れるとおよそ4,000人程度が毎日出入りしている。


その分学校の敷地もかなりの規模なもので、学校案内によると、数字だけではよく分からないぐらい漠然としたスケールだったが、東京ドームに例えてみると約12個分くらいはあり、イメージが付きやすくなった分、より鮮明に広い事が強調される。


正直、入学式だけなら早く帰れるものだと思っていたが、全ての施設を回る為に、終了予定時刻が夕方になっており、俺が家に帰る頃には外は真っ暗だと考えていた。


そして物語は冒頭に戻る。


正直かなり適当に走り過ぎた。


こんな似たような住宅街だ、男の位置や俺の家の方向が完全に分からなくなってしまった。


助けを呼ぼうにも携帯は鞄の中にある事を思い出し、やってしまったと自分の頭に手を当て悩む。


結論として俺は近隣の家に助けを求めるのが最善と思い、この角を曲がる前に玄関があった事を思い出し、細心の注意を払らって素早く行動する。


角を戻った瞬間、ドンッと俺は何かにぶつかり尻餅を着いてしまうが、まさかさっきの男かと思い顔を慌てて上げるがそこには、何故だろうこの状況だと全然嬉しく無い。


ラブコメですら古すぎて全然使われないのに、まさかのこんな状況での女の子と角でぶつかるなんて.....


「痛ったいわね、どこ見て歩いてるのよ!」


何だこの急なラブコメ展開は、セリフまでテンプレじゃないか、後はこの彼女が転校生でパンさえ咥えていれば完璧だな。


「急に飛び出してすまない、怪我はしてないか?」


「本当よ! あーもう! あいつにも逃げられるし今日は本当についてない!」


あいつ、彼女はあいつって言ったか? 確かにあの男とは限らないが、こんな時間にこんな所でウロウロしてるなんて不自然でしかない.....


俺は彼女に問いかける。


「あいつってコートの男か?」


彼女はあーなるほどと言い俺に鞄を持っていたか質問してきた。


「あぁ、だけど串刺しにされた」


「そう、それじゃあ、あいつが持っていた鞄は貴方のだったのね、いままでそんな事は無かったけど、よっぽど貴方の事が気に入ったたのかしら」


彼女はクスクスと笑って話してくれるが、俺にはさっきまでの怒った顔より今の方が可愛いとか、そんな事を言ってる暇は無かった。


「ちょっと待て、あの男を知ってるのか?! 俺はあの男に襲われたんだ!」


「でしょうね、だけど今日はもう大丈夫よ」


彼女は指を上に向けて大丈夫と言ってくるが俺には意味がさっぱり分からなかった。


「だってこの曇り空じゃ星は見えないもの」


彼女が言ってる事が俺には分からなかった。


今日はもう遅いのでまた明日話す事になり、偶然にも彼女は俺と同じ制服を来ていて、明日学校で話す事になった。


その際、連絡先を交換する流れになったが、携帯ごと男に持って行かれた事を話したら更に爆笑され、俺は美少女の連絡先とメンタルを失った。


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