マイ箸

石動天明

マイ箸

 私、土屋つちや優衣ゆいが、同級生の水埜みずの琴音ことねさん、柳生やぎゅう宍道しんじくんと学校帰り、土曜日の午前中授業の後の、お昼ご飯に丁度良い時間に、駅の牛丼チェーン店に行った時の話です。


 私は大盛り豚丼とコーンサラダセット、水埜さんは大盛りカレーと鶏の唐揚げ六つ――みんなで分ける為みたい、優しい水埜さん♪――、柳生くんは大盛りマグロ叩き丼と冷ややっこにポテトサラダを注文しました。


 店員さんが、注文を取りに来る時に持って来てくれた水を配り、私はいつも水埜さんが気を回してくれるのを真似して、お箸を取ってあげようとしました。すると、


「私、マイ箸持ち歩いているから」


 水埜さんは通学鞄の中の、お弁当箱を入れて持ち歩く保冷バッグから、長方形のプラスチックのケースを取り出しました。その中には水埜さんらしい、爽やかな水色のお箸がするりと姿を現しました。


「俺もマイ箸持ち歩いているから」


 柳生くんはそう言って、懐から細長いビニール袋を取り出し、その中身を、横にして口に加えると、右手を下に引いて半分に分けてしまいました。


「……コンビニの割り箸は、マイ箸とは言えないんじゃないかなァ」


 私は醤油やドレッシングなどと一緒のトレイに、ケースに入れられている黒いお箸を取りながら言いました。

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マイ箸 石動天明 @It3R5tMw

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