第21話 怪我。

まだ痛む。


少なくとも、正常に考えれるくらいには、痛みは収まった筈。

お腹の方を触れば、痛みが襲ってくる。それと同時に、生暖かい液体が垂れてるのも分かる。

……血か。


「糞……野郎……」

何とか気絶しないで済んだし、あの糞野郎の言う通り、死ぬことも無かった。

身体を守っていたすべての魔力も一時的に''暴走''しては、人間の少女と同じくらいの抵抗しか持てなくなった。

……だからこうやって、私の血が流れているんだ。


『さぁ、今日はここでおしまいだ。いくら龍だとしても、三回も魔力を暴走させたのだから、もう復活してくる事は無いだろう』


私が魔術を使おうとするたびにカウンター、なんてダサい名前の陣形を使ってきた理由が、それか。

……最悪、まんまとそれに引っかかっちゃった。


「はぁ……ん……ぃ…………痛い……よ……」

腕は……何とか動いてる。足も、一応動いている。

……顔は、見たくもない。


「絶対に、殺して……」

あの時魔術に拘らずに、喰い殺せば……こんな痛みを味わう事なんてなかった。

こんな、怖い痛み。





――――――違う、怖くなんかない。

私が、怖い訳がない。


でも、それ以上に。


「……負け、ちゃった」

奴の対策にまんまと引っかかって、負けた。

下手すれば私はここで死んでいたのかも知れない、もし奴が屋根の所で止めを刺しにきたらと思えば……。



――怖い。



このまま路地裏にいるのも、時間の無駄。場所的に、三十分……いや、二十分くらいで家に付けるかも知れない。けど……。


「……いったっ!?」

立ってみようと思えば、身体全体に激しい痛みが襲ってくる。

こんな痛み、いつもなら魔力で強引に治させるのに……ほんとっ、最悪。


お腹の方からは血。たぶんそれ以外からは出血は無いと思うけど……一応、確認しておこう。

腕は少し痛みがあるのを除けば問題無く動かせる。落下の衝撃でやられたのは……足の方なのかな。……それとも、お腹も……かな。


とりあえずもう一度立ってみよう。ただ、今度はゆっくりと。


……やっぱり痛い。

脚の方だ、一応確認しておこう。


「……さいあく」

激しい痛みがあると思ったら、それは当然だった。

私が落下した場所は色んな物が不法投棄されているような場所。それが不運だったからか……不法投棄されてた鉄の尖がった塊が刺さってる。


「このまま、魔力が回復するまでは……。

……やっぱ寂しいから、早く帰りたい」


早く帰りたいけど、今は痛みが少しでも収まる為に、少しでも休憩していないと。



……レウィスは、今頃何してるんだろ。

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