適当男子高校生と年下彼女

越水ナナキ

第1話 高校2年生

 俺はいつも疑問に思う。高校での入試の面接において終始、嘘や偽りのない発言をした者は存在はするのかと。俺は、堂々と胸を張って言える、正直に思っている事を全て言い切ったと。


 高校入試の時、俺は学科試験はほぼベストと言えるほどに解けていた。そして、面接ではとりあえず、正直に行こうとした。嘘を交えると何かしらの心残りが生じるやもしれないというのがあったからだ。


 「志望動機を教えてください。」


 面接官の先生から定番中の定番が飛んできた。5人での集団面接であり、やれ校風だ、国家機関だ、自分の将来だと口にしていた。まぁ、真剣な表情から察するにそこまで嘘やテンプレを言っているわけではないのだろう。

 俺は、心の内で他の4人に対して謝罪した。そして、俺の番となり、


 「志望動機は、国家機関で最新の設備を誇り、そして何より同じ中学校の出身者がいないということです。」


 自分でも思う。何をバカな事を言っているのかと………。

 面接という場に本来どういう雰囲気が適切かというのは知らないが、俺の発言で少し空気が変わったことは容易に分かった。しかし、面接官は顔色ひとつ変えずに淡々と進行していき、面接は終了した。

 自分でも疑問ではあるが、高校からの書類には合格の文字が記されていた。

 

 そんな事をふと思っている内に学校、そう俺の通う国立第一都市大学付属第一高校に到着し、二年目の校門をくぐった。




 今日は始業式であり、クラス替えやなんやとあり、騒々しくも楽しい日々の始まりとなった。まぁ、午前で放課となったわけだが。


 「なぁ凌駕、今日部活ないからこれからどっか昼飯に行かないか」


 と五十嵐達也に俺は声を掛けられた。五十嵐とは一年の時に同じクラスで知り合い、二年でも同じクラスということになり今に至る。紹介が遅れたが、俺は萩原凌駕といい、中学からやっていた卓球部に所属している。卓球部は校内でも1、2を争う程に緩く、休日のある部活動ということで名が知れている。


 「あぁ、いいよ。それよりお前のいるバスケ部が休みってのが不思議だな」


 「つい昨日まで遠征だったからな」


 五十嵐の所属しているバスケ部は一昨年前くらいから県内では常勝軍団的扱いで有名であり、卓球部とは対照的で休みはレアらしい。頭が良く、長身で細マッチョ揃いということで女子連中からの人気は凄まじいものがある。


 「あぁなるほどね。てか愛しの彼女さんと時間を過ごされた方が良いかと思うのだが、いいのか?」


 五十嵐には、中学からの彼女がおり、高校での休日の無さにキレているらしい……名前は確か有栖川雪といったかな。


 「それは問題ない、雪も行くことになってるから。」


 「いや、それは俺が邪魔になるパターンだろうが。他人様のラブコメシーン見ながら昼飯とかどんな地獄だよ。」


 まったくこんなお誘いは無下にしたところで罰は当たらないだろうと決心して帰ろうと席を立つと、

 

 「荻原君は行かないの?」


 まさかの彼女さん登場である。五十嵐と知り合った際に有栖川とも仲良くなった?ような感覚がある。


 「いや、どうせ邪魔になるでしょ。察してあげて」


 すると、有栖川は不敵な、いや企んだような笑みを浮かべて、


 「だって、今日あたりなら荻原君の彼女さんを見られるかなぁとか思って、中3だっけ?」


 「あ?」


 俺は声とは言えない声を出していた。確かに、彼女はいる。そう、忌々しい中学校にいる。俺がこの人は他の奴らとは違うものを持っていると感じ、どんどんと惹かれていった。同じ部活をしており、色々と接点があり、合格通知を手にしたと同時に告白して付き合う運びとなった。有栖川の言う通り俺は高2、彼女は中3という訳である。


 「待て、なぜ有栖川がそんな事を知っている?なぁ、どうしてだ?中学生に手を出した鬼畜野郎とかほざいてくれた五十嵐さんよ。」


 「いやぁ、なんかさこの前のデート中に達也から荻原君の彼女は超絶可愛いって聞いたから、会ってみたいなぁ~と」


 と五十嵐でなく有栖川から返答が来た。五十嵐に対する睨みを添えて………。


 「彼女とデート中に他の子に対して可愛いは恐ろしきタブーだな」


 「だよねー、さすが荻原君」


 「すみませんでした。」


 五十嵐がヤバそうなのでこの辺でやめておこう。

 

 「わかったよ、頑張って誘ってみるよ。今日あの方は学校では無いらしいから。」


 「よろしくね~。」


 と会話、後半はほぼ有栖川だったが終えた。昼飯の場所を駅近くのファミレスに決めて散った。といっても有栖川と五十嵐は二人で昼飯前に駅でデートするそうだ。

 校門で別れると俺はあの方に電話を入れた。


 「何?」


 少し鼻にかかったような声が聞こえた。本人が気にしているのを知っていて俺はこう切り返す。


 「また、声が鼻にかかってるな、どうしたまた風邪でも引いた?」


 「いや、たぶん風邪は引いてない、んで何?」


 このやりとりがいつも電話の時にある。パターンとしては彼女が風邪を引いているのか、いないのかの2パターンであるが………。


 「お昼はもう食べましたか?」


 「いや、まだ」


 「では、私と一緒に食べませんか?」


 「え、面倒くさい」


 「私の奢りなんすけどねぇ~、まぁ面倒なら仕方ないっすね」


 ここで、「では、切りますね」と嘘を言おうとすると、


 「行く、どこに行けばいいの?、何時?」


 まったく現金な奴である。だが、これほど面白い会話を俺は知らない。場面に応じて一人称や言葉遣いをコロコロ変えていくのも俺の趣味である。


 「いや、迎えに行くよ。家?」


 「今、駅で勉強してる」


 「あら、真面目。学年1位はやはり違いますねぇ。」


 「馬鹿にしてるでしょ。」


 「そんなとんでもない」


 「じゃあ、早く迎えに来て」


 そして、電話は切られた………俺の彼女である四宮零によって。

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