煽りは任せろ

 それから3日後……。


「おい、聞いたか! レイン嬢とプリンセ嬢が結婚相手を発表するってよ!」

「お前は情報がおせぇなぁ! もうその話題でもちっきりだって!」

「誰だと思う!?」

「いやぁ、誰かって言われても今まで全員にべもなく断ってきてるからなぁ!」

「そう! そこなんだよなぁ!」



「よしよし、いい感じだ」


 街の皆が話題に挙げていることを空から確認しながら俺は嗤う。

 ちなみに体の方はここ3日動きまくってたら全盛期の8割7分くらいまでは復活した。


「わざわざ話題にする必要はあったのかのう」

「ん、ちなみに必要はない。ただ、俺がしたかった」

「主はこっちでも相変わらずじゃな」

「そういえば聞いてなかったが、お前の感覚だとどんな感じだったんだ」

「特に変わりはなかったのじゃ。そもそも、わしにとって1日も1年も変わらんのじゃから」

「そうか、お前はそうだったな」


 そして、武器つながりで腰の短刀を見やる。


「『黒紅』もしてなかったしな」


 元々愛用していた真っ黒な短刀は俺が帰ってきて抜いて見ると、黒の中に赤が混じっているような色合いになっていた。

 幻想級ファンタズマルをまともに斬っておいて刃こぼれとかの類が無いのはおかしいと思うが。


 何でも、皆が手入れをしようと抜こうとしていたらしいのだが、頑として抜けなかったらしい。

 しかも、俺は倒れた時黒紅を握ったままか、倒れた時に手放したくらいだったから鞘になんて入れる暇なかったと思うんだが。

 真相は闇の中である。


 で、あの戦いが終わったら名前を付けるって約束してたからな。

 昔の人はなんで刀とかに名前つけてたんだろうって思ってたけど、そもそも名前つけてたのは刀作る側の人間だから、創作物に名前付けるのは当然か。

 で、使う側がつける場合も命預けるんだからいいだろ。

 よって、俺は中二病ではない。

 Q.E.D.。


「で、これからどうするのじゃ?」

「決まってるだろ? 期待を煽りに煽る」


 2人からそれぞれ自分にアタックをかけてきたときに有望株と言われていたやつらは聞き出しておいた。

 まぁ、あくまで世間からの評価ではあるが。


「で、そいつらが候補じゃないかといううわさを流すだけ流す」


 7年前には悪目立ちしていた俺だが、今となっては姿も多少変わってるし、そもそも覚えてもいないだろう。

 どんなに悪人でもその人の姿によほどのインパクトがない限り7年後なんか覚えてないだろう。

 つまり、俺が酒場やらに行って騒ぐだけ騒げばいいという簡単なお仕事だ。


「主、目立つのが苦手じゃなかったかの?」

「そう、そこなんだよな、ネックは」


 一般人なら簡単かもねっていうことだな。

 コミュ障には辛い。


「じゃが、主は向こうでは社長もやっておったくらいじゃし、いけるんじゃなかろうか」

「……確かに。俺社長やってたんじゃん」


 なんか行ける気がしてきた。


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