165日目 猫耳

「……レインちゃん、これは?」

「いえ、ですから私は耳がないんですよ」

「……似合うのにー」


 2人が熱心に物色しているのは帽子である。

 ただし、プリンセが持ってきたそれは虎族、ライオン族用に作られたものであり、いわゆる猫耳の部分に穴が開いているのだ。


「穴が開いている帽子は流石におかしいでしょう」

「……レインちゃんに猫耳が生えればいいのに」

「どんな解決法ですか!?」


 普通、この帽子の穴が塞がっているタイプはないかを考えるところでしょう。

 逆転の発想というか、なんとも突拍子のないことを考えますね。


「……でも、別に本物である必要はないんじゃない?」

「どういうことです?」

「いや、だから、作り物の耳でも……」


 作り物の耳ってなんですか。


「……穴があるからおかしいなら、穴をふさぐための耳をつければいいんじゃない?」

「今! なんておっしゃいましたか!?」


 バーン!!


 奥からあの女性の方が出てきました!?


「お客様!? 今、なんと?」


 ガクガクとプリンセをゆさぶるオーナー。


「……え、……え?」

「ちょ、ちょっと、プリンセちゃんが困ってますから!」


 ヒートアップしていたオーナーをプリンセから引き剥がす。

 ペイっと引き剥がしたプリンセちゃんを抱え込みます。


「……こ、こわかった……」


 プリンセちゃんが珍しく動揺しています。


「プリンセちゃんは付け耳がどうのと言っただけです! あまり怖がらせないでください!」

「し、失礼いたしました。天啓を受けたような気分でしたので、つい舞い上がってしまい……」


 天啓って。

 大げさすぎます。


「どうです、お客様」


 オーナーがプリンセに問いかける。


「お連れ様の猫耳姿、見てみたくはありませんか?」

「……可愛いんだろうけど……」


 なんでちょっとプリンセちゃんもワクワクしてるんですか。


「……猫耳あれば、リブレさんにモフモフしてもらえるよ?」

「ぐっ……」


 たしかにそれは非常に魅力的な提案です。

 プリンセちゃんが味わっている感覚を味わえるという事なのですから。


「すぐにご用意するという事はできないでしょうが、必ずや質の良いものをご用意してみせます。その際には! ぜひ、使用していただけないかと……!」

「まぁ、やぶさかではありませんが……」


 なぜそこまで私の猫耳に固執してるんです?


 バーンッ!


「話は聞かせてもらった!」


 天井裏からハンネが登場!


「むぎゅう」

「お店を壊した罪で現行犯逮捕です」


 即刻レインにより押さえつけられているが。


「べ、弁償するから。そんなことより、その話、あたしも一枚かませてもらおう?」


 店を壊したことをそんなことで片付けたことに対し、レインから殺気が飛ぶが疑問形になりながらも言い切った胆力をここは褒めたい。


「……つまり?」

「あたしなら、感覚もある付け耳を作れるんじゃないかって話さ!」

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