166日目 行政

「なぁー、いいじゃないかー」

「絶対にダメです」


 服屋のオーナーと意気投合しかけていたハンネを連れ帰り監禁して次の日。

 未だに食い下がっていた。


「逆に、なんでダメなのさー」

「いえ逆に、なんで許されると思ってるんです?」


 今まで散々禁止されてきているでしょう。


「まず、大前提として、ハンネさんはこれまでヤバい薬をいっぱい作ってきていますよね?」

「ヤバくないよ? ちょっと副作用があるだけさ」


 それはヤバい以外の何なのでしょう?


「それで、作ったとしても世に出ていませんよね?」


 ハンネさんの研究室を訪れた際に散々研究成果を自慢されたから知っていますが、決して世に出してはいけないような効果の薬とかまで作っていますからね。

 それを作った動機が「面白そうだったから」とか「出来そうだと思ったから」とかなのが本当にヤバいところですが。


「今回はハンネさんも世に出すことを目的として作ると思いますが、十中八九最初はヤバいものが出来ます。それを許容するわけにはいきません」


 ハンネさんは天才ですから、いずれ副作用のない耳を生やす薬を作れるかもしれません。

 ですが、それまでの過程でどんな副作用があるかわからないものを作ってしまうでしょう。

 今までも副作用無しのものを作れていないのですから。

 それを助長するようなことは出来ません。


「オーナーさんもかなり過剰に反応していましたから、ハンネさんの手助けしかねませんからね。あの人と会うことも禁止です」

「えぇー」


 本当になぜかはわかりませんが、かなり過剰な反応でしたから、何らかの意図があるのは確かです。

 リブレさんじゃありませんから詳しくはわかりませんが、とりあえずハンネさんと組ませるわけにはいきません。


「さ、そんなことより、旅行を楽しみましょうよ!」

「……ん」


 尻尾をふるりふるりしながら聞いていたプリンセに話を振る。

 今日はどなたかはわかりませんが、約束は取り付けれたとアミラさんが言っていましたからね。

 どこに観光に連れて行ってくれるのでしょう。



「ここだ」

「おぉー」

「……おっきいね」


 アミラがレインたちを連れてきたのはライオン族の街の一角のひときわ大きな建物。


「リブレ殿に提案されて作ってみたものなのだが、好評でな。折角だからと思ったのだ」

「リブレさんが?」


 いつの間にドルガバの行政にまで口出ししてたんです?


「いや、アドバイスと言うほどでもないのだが、以前レイン殿の家に伺った際、お風呂をいただいただろう?」

「そうですね。入っていかれましたね」


 基本的にドルガバではお風呂ではなく、水浴びですから珍しかったようです。


「そこで、大衆浴場というものがあるとリブレ殿に聞いたのだが、それをアレンジしたものがこれだ」


 中に入ると、大きなお風呂がありました。

 しかし……。


「水ですか?」

「そうだ。プールというらしい。そちらも持っている水着を着れば倫理的にも何の問題もない」


 見れば、若い方を中心に気持ちよさそうに泳いでいますね。


「水着は貸し出しもしているからな。入ってみてくれないか?」

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