163日目 旅行計画

「おかしい……」

「……なにが?」

「だって……」


 レインは困惑していた。


「こんなに暇なことがあるんですか!?」


 あまりにもやることがないのだ。

 いや、日々の生活は送っている。

 だが、張り合いがないというか、刺激が足りないのだ。


「……たぶん、おかしいよ?」

「そんなことはわかってるんです。でも、しょうがないじゃないですか。思っちゃうんですから」


 気分はブラック企業で勤めすぎて退職後も思わず通勤しそうになるサラリーマンといったところだろうか。

 忙しかった頃に体が慣れ過ぎていて急な変化について行かないのだ。


「……うーん」

「どうしましょうか」


 プリンセもこうは言っているが、暇をしているのは事実である。


「……じゃあ、旅行にでも行く?」

「どこへです?」


 リブレさんを連れて行けるところなんて……。


「……わたしのいえ」

「あぁ!」


 確かにドルガバなら国交がちゃんとしてますし。

 行ったこともあります。

 ただ、観光目的で行ったことはなかったので確かに見て回る分には面白いかもしれません。


「確か、馬車が整備されたんですよね?」

「……やっと、道が完成したらしいね」


 ランガルとドルガバを繋ぐ道の作業は延々と行われていたが、この頃やっと完成したらしいのだ。

 そして獣人族が御者を務める馬車も運行中らしい。


「でも、車いすがのりますかね?」

「……1台、貸しきろう」

「なるほど」


 でもそのお金はどこから?


「いや、いっぱい持ってるでしょ?」

「え?」

「……王様にいつでも受け取りに来いって、言われてなかった?」

「……あぁ!!」


 幻想級ファンタズマル討伐の報奨金としてとても使いきれないぐらいのお金をあげると言われていたんでした。

 リブレさんの分はともかくとして、私の分もあるって言ってましたね。


「じゃあ、そのお金で行ってみますか。宿はどうしましょう」

「……うちじゃ、だめなの?」

「その場合、リブレさんの身の安全が保障できませんよね」

「……たしかに」


 プリンセの父は態度には出さないが娘を溺愛しており、リブレを最大の敵として認識している。

 プリンセ母の静止があっても闇討ちくらいはしてくるかもしれない。


「どこかに宿をとりましょう。いいところはないですか?」

「……うーん……。行ってから、知り合いに聞いてみよう」

「詳しい方がいるんですか?」

「たぶん……」


 なら安心ですね。


「ハンネさんにも話は通して、リブレさんの薬をどうするのか決めましょう」


 何日向こうにいるかわかりませんが、特に急ぎの用もないですからね。

 長くいることも視野に入れるべきです。

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