112日目 人生相談
「と、いう訳なんですけど、どう思います?」
「なんだいそれは。軍属のあたしへのあてつけかい?」
レインは女性として最も尊敬しているエルメの下へ相談に行ったのだが、好意的には取られなかったようだ。
「いえ、決してそういうわけではないんですけど……」
「じゃあ、なんだってのさ」
「まぁ、先達への意見伺いと言いますか……」
「ご意見番と言われるほどの年じゃないわよ!」
まぁこのやり取りまでは既定路線ですね。
「それで、どう思います?」
「……あんたも強くなったわね……」
そりゃあもうエルメさんとの旅で鍛えられてますから。
「それで、なんだって? やることがなくなって暇だからどうしようかって話だったかしら」
「そうです」
久しく全くもって何もない日々はなかったので、どうすればいいのかわからないのです。
思えば、両親が死んでから穏やかな日々というのはなかった気がします。
今は何もないという意味ではそうなのかもしれませんが、リブレさんが起きないままというのは不穏そのものですからね。
「プリンセちゃんはどうするんだい?」
「……ん、レインちゃんのを聞いて、考えるよ」
プリンセも特にこれからについては考えていなかった。
大人びている、というか大人びすぎているプリンセでも実態は6歳の女の子である。
ここにいるのはただリブレの傍にいたいというだけだし、これからどうするのかなんて考えにも至っていない。
レインが難しそうにしているので難しいんだろうなとは思いつつ、ゆっくりでいいかと思っているのだ。
「あんたらは……」
エルメは苦悩する。
なんでこの目の前の2人の少女はこうも不器用なのだろうか。
プリンセは何も考えていないが、レインの意思を尊重してあげようという意思だけは統一している。
レインもレインでリブレが帰ってくるのを信じて今の家でそれこそ、普通の家のように過ごしていけばいいだけなのにそれでいいのかとか考えてしまっている。
先ほどのレインの言葉を借りて、先達として言わせてもらうなら。
「馬鹿なのかい!? あんたたちは!」
渾身の拳骨を頭にお見舞いする。
「痛いっ!? 何するんですか?」
「……(コクリ)」
「衝撃軽減しといて文句言うんじゃないわよ!」
エルメの拳骨はレインは風魔法による層と、逆風により威力を減衰され、プリンセは拳骨が頭に当たる瞬間に身を沈めて衝撃を逃がしていた。
「いい!? 大前提として、あんたたちは苦労人なの! 同居人が眠ったまま目覚めないとか普通ありえないのよ?」
その上で、とエルメは続ける。
「あんたらは自分たちで稼げるんだから、日々の暮らしは問題ないわ。だから、少しでもリブレの傍にいてあげなさい」
エルメは愛の力で、など信じてはいない。
しかし、リブレの傍にいるという目的があれば、2人は元気でいられると判断したのだ。
「リブレが帰ってきたときに、なんて声をかけるか、想像しながらね」
そう、目の前の2人は、まだ若い恋する少女なのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます