マニアには刺さります

「……おはよー」

「おう、おはよう。なんか不機嫌だな?」


寝起きでもしっかり着替えてはきた少し髪がぼさっとしているリオン。

朝からなんでそんなにって程元気なことが多いのだが、今日は少しご機嫌斜めなようだ。


「そりゃそうだよー……。なんで最初っから戦いに混ぜてくれなかったのー!?」

「そこかよ!?」


ただの戦闘狂なだけだった。


「リオンの体を思いやってのことだったんだよ。許してくれ」

「んー、それなら仕方ないねー。許すー!」


いや、許してもらった身で言うのもなんだが、チョロいな!

まぁ確かに何でもないような内容ではあるけれども!


「で、彼らは何なのかなー?」

「リオンをお嫁さんにしたいと考えている人達の部下じゃないか?」

「ふーん、やっと来たんだー。でも、もうなんか心が折れちゃってないかなー?」


戦ったからな。

まぁしたことといえば、ぽいぽいカプセルと爆弾投げてただけだけど。

それらが俺の後ろに積み上げられており、逃げられもしない。

十分、絶望するに値するだろう。


本来なら、それなりの人数がステッド・ファストの1枚くらい破れる力を持っているが、知らない間に閉じ込められたという事実により、そこまで頭が回っていない。

周りでは阿鼻叫喚の嵐だしな。


それに加えて、リオンの登場である。

普段の天真爛漫なリオンなら、別に良かったのかもしれない。

しかし、今回現れたのは不機嫌なリオンだった。

戦闘関係において。

つまり、殺気を放っていたのだ。

領主クラスでやっと戦いになるというリオン。

そこらの三下ではその前に立つことも許されない。


「んー、でも、折角だしねー。みんな、戦おうよー!」


ただし、本人からわざわざご指名が入った場合はまた話は別である。


「はは……」

「流石に無理があるって、リオン」

「そうは言ってもさー。折角戦えると思ったのにー……」

「あとでなんかお願い聞いてやるから」

「本当ー!?」

「……可能な範囲で、倫理的に問題がなければな」


これで落ち着くリオンも謎だが、未来の俺に負債を残してしまった。

どうにか、善処してくれることを願おう。


「で、討伐戦は?」

「んー、私の趣味じゃないんだけどなー」

「それは俺もだよ。おい、お前らに提案がある」


項垂れていたやつらの中でも、数人が顔をあげる。


「このまま帰すわけにはいかないが、別に俺たちは人殺しをしたいわけでもない。武装解除して、こっちの捕虜となるなら、命だけは助けてやってもいい」

「ほ、ほんとか……?」

「あぁ、ただし、そっちに一切の選択権はない。こっちに命を握られていることを意識してもらおう。衣食住は死なない程度に保証する」


我ながら、悪役が似合ってるな。

いや、別に攻められた側だから悪ではないんだけども。

言ってるセリフが悪役のそれだ。


「「「ご主人様、格好いいです……!」」」

「……ねぇ、やっぱり結婚しない?」


一部のマニアには刺さったようである。

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