準備万端

「前々から俺たちを監視していたやつらがなぜ今になってまとまってくるんだよ」

「ぐ……!」


もちろん、帰ってくれるわけもなく、その一団が動くたびに上のカプセルがはじけ、硫酸が降り注ぐ。


「まぁ、一番人員を割いてたところが撤退したからだろうが、全員リオンが目当てで来てるんだろ? 俺をやった後でどうせ殺し合いだろうが」


そう、実はメガネ領主のとこが一番しっかりと人員を割いて監視を行っていたのだ。

慎重だよな。

特に、上の指示なくそういう動きをとっており、バレないように交代制でしっかり他の仕事をしていたというのも凄い。

いや、今はそれはいい。


もう1度、周りにいる奴は仲間ではないことを思い出させる。

そして、さっきまで動いたところに硫酸が降り注いでいることから、他の部隊が動けばいいという考えが浮かぶ。

結果、全体として動きが悪くなる。


「ほい」


そこに爆弾をぽいっ。



ガアアァァン!


「あれは爆弾じゃないってだけで俺が使わないってわけじゃないからな」


かつては爆弾魔とまで呼ばれた俺だ。

基本的に多勢に無勢になるのは目に見えてたからな。

爆弾のように大勢に効果があるものを作らない理由が無い。

しかし、これだけ時間があれば俺だけでもまあまあ量を用意できた。


ぽいぽいぽいっ。



ガガガアアァァァァン!


「おぉ」


こんなに近くで爆弾を体験したのは初だな。

むやみに火薬ぶち込んでるから中々の威力だな。

家の周りのステッド・ファストが2枚吹き飛んだぞ。

これキラの攻撃もある程度防るんだけどなぁ。

やりすぎたか?


ほんと、辺境に家作っておいて良かった。

近隣住民が近隣にいないからな。

お隣さんすごい遠いし。

もし回覧板があったら隣に持っていくのに他の用事がないと家から出るのが億劫なくらいには遠い。

少なくとも、徒歩圏内ではない。

そもそも、うちの前の番の人がちゃんとこっちに持ってきてくれるかわからないところから始まるが。


「ご主人様がこそこそと作っておられたのはこちらでしたか」

「あぁ。いや、こそこそととか言うなよ」


実際、こそこそ作ってたけど。


大体、全体の半分くらい処理できたかな。

少し冷静な自分がいるが、あれだな。

自らクソ領主を斬ってから、殺すことに対する忌避感が薄れたような気がする。

人間、慣れってものはあるし。

自分のみは自分で守らなきゃいけない分、別に悪いことではないのだろうが。


「くそっ! 聞いてないぞ! 全員でかかればどうにかなるんじゃなかったのか! 俺たちはおりる!」

「俺たちもだ!」


ガツン。


「なんだ!?」

「逃がすわけないだろ」


家にまで攻めてきていて、形勢が悪くなったら退くとか、許さない。

どうせまた態勢を整えたら戻ってくるんだからな。


ぽいっ。


ガアァァン!


「ま、待て! 俺たちはもう手を出さない! だから……」

「いやぁ。それは通らないだろ。あと、もう1つ悲報を教えてやろう」


1つの感情が覚醒したのが見えたからな。


「魔王の娘のお出ましだ」

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