言質大切

「結論から申しますと、ダメではあります」

「だよな」


人身売買については前も聞いたことある気がするし、仮にもアンリさんが治める街だ。

そんなことは許しはしないだろう。


「だけど、含みのある言い方ってことはなんかあるんだな?」

「そうですね。お金のないものを従者として雇う場合、奴隷のような待遇になってしまう可能性があります。もちろん、その主人によるところがありますが」

「なるほど?」


となると。


「お前たちもそうなる可能性はなくはなかったな?」


給料はいらないとか言ってたし。


「ご主人様にならばなにをされてもいいというところはございますから」

「やめとけよ、その思想」


マジで危ないだろ。


「となると、孤児院は割と条件に当てはまるわけか」


お金がないのは既定路線。

年少組の食料を保証してくれるなら年長、年中組は言う事を聞かざるを得ないだろう。

それがどれだけひどいものであっても。

それがわかってるからこそ孤児院側も頑張っているのだろう。



だが、あの後数日孤児院を見ていたところ、明らかに風体の悪い奴が訪れて来ていたりした。

話の内容まではわからなかったが、まぁろくでもない話をしているのは確定だな。

なんかもう両者の感情からそれが伺えた。

一方は{嫌悪感}の塊、一方は命令なのかあまり強くはないが、ゲスった感じの感情が漏れている。

命令している本人が来ているという事はないだろうが、それなりに恩恵を受けてる奴が来ているんだろうな。



ガランガラン!


そこからまた数日後、家の前にインターホン代わりに置いておいた鐘(?)がけたたましく鳴る。

うるさっ!

これあれだな。

もうちょっと考えたほうがいいな。

近隣住民も飛び起きるな。


「はい、どなたでしょう」

「すみません! 助けてください!」


おうおう。

なんと物騒なことだ。

第一声「助けて」かよ。


「どうかしましたか?」

「ね、姉ちゃんが連れて行かれたんだ! 他に頼れる人もいないし、誰でもいいんだ! 姉ちゃんを……」


うーん。

どういうことだ?

俺はこの世界に知り合いなんていないに等しい。

姉弟なんてなおさらだ。

誰でもいいと言っておきながら、わざわざうちに来たのには理由があるはずだ。


「孤児院の奴か?」

「! そうです! 姉ちゃんを知ってますよね!?」

「いや、お前の言う姉ちゃんが誰かはわからんが」


玄関のドア越しに話す俺。

決してドアを開けない。


「お願いだ! 助けてくれたら、何でもするから……」

「よっしゃ! 助けてやろう!」


言質とった!

よっしゃあ!

助けに行ってやるか!

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