交渉は迅速に

何を売るか、それは何を作るかに直結する。

何を作れるかを考えてから、どう売るかを考えるという方法もあるが、なにせ何のメソッドもないので何を作るのかも決まらない。

となると、どういう方針のものを売るかを考えてから、なら何を作ればいいのか考えたほうがいい。


こういう時、大抵日本特有のものとかが役に立ったりするのだが、アンリさんのせいで日本のものは割とここに浸透してしまっている。

寿司とかな。

となると、その線はダメだが。


「なぁ、この世界に小麦ってあるのか?」

「全体としてあまり多いとは言えませんが……」


聞けば、米が入ってきてからそちらが主流になる前は小麦文化だったそうだ。

第七界の人たちの味覚が米に合ってたんだろうな。

今は皆が米栽培に移行したため、小麦の産出量は格段に減ったらしい。


「じゃあ、まずはぞの小麦を作ってる人のところに行ってみようか」



「こんにちは」

「んぁ? なんだ、おめーら」


もういかにも辺境ですよってところに小麦を作ってる人はいた。

俺が前に出ると肌の色でなんやかんやありそうなので遠くから見守っている。


「こちらの小麦を買い取らせていただきたいのですが」

「はぁ?」


おいこら。

もっとあるだろ、なんか。

世間話から入るとかさ。

別に俺が話すの得意じゃないからイメージでしかないけど。


「そりゃ買い取ってくれるってんならありがたいが……。いくらだ?」

「このあたりでどうでしょうか」


俺があらかじめ書いておいた紙をぴらっと見せるアン。


「ほう……」


市場に出回っている米よりもちょっと安いくらいの値段を書いておいた。

小麦の需要が落ち込んでいることから考えると、中々の値段なのではないだろうか。


「この値段で買うってんならありがてぇが……。ほんとにおまえさんに払えるのか?」

「お支払いになるのはご主人様ですが、お代はこちらに」


ここで渋ったりなどせず、ポンと出すのも大事だ。

こんなお金などはした金に過ぎないと思わせるのも大切だ。


「お、おぉ。済まなかったな」

「そして出来れば、定期的に買い付けに来たいのですが」

「そりゃ構わねぇが」

「正式に定期的に購入することが決まった場合、値引きなども考慮していただきたいのですが」


ここでこの交渉も終わらせておく。

輸送費なども考えた場合、ここが一番効率が良いので早めに原料の確保をしておきたいのだ。


「そ、そんなことすぐには決められねぇよ」

「では、この話はなかったことに。ご安心を。先ほどの分はしっかり買い取らせていただきますので」


相手がこちらの情報がないうちに他に当てがあることをほのめかす。

実際はそんなもんないのだが、向こうにしてみれば金払いのいい客を逃してしまうかもしれない。

となれば。


「わ、わかった。定期的にうちから仕入れてくれるんだったら、考えてやるよ」

「ありがとうございます」


ここでメイドが仲介してるというのも大切だ。

俺が行ってたらまだ交渉の余地はあったが、メイドは言われたことをただこなすだけ。

向こうが交渉を望もうが、そんな権限はメイドにはない。


これで割と安く原料は確保、と。


「リブレが悪い顔してるよー……」

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