薬はあの手この手で

結局、俺がまともに動けるようになったのは事が終わってから1週間後だった。

自分で言うのもなんだが、メンタルやられ過ぎだ。

いつかあるかもとは思っていたが、本当に人を殺したとなるときついな。


「「「本当にご迷惑をおかけしました……」」」

「まぁ、しょうがない部分もあるとは思うけどな。せめて簡単に捕まらないようにしてくれ」

「「「承知いたしました……」」」


アンリさんが最初に訪れた領主の研究室に薬品を持ち込んだ結果、割と簡単に解毒剤は作れたらしい。

まぁ、こういうのは作り方が杜撰だからな。

こういうやつの厄介なのは1つの解毒剤を作っても少しだけ構成成分を変えた同じようなものがすぐに出回りだすことだ。

ただ、これに限って言えばゲス男しか製法知らなかったっぽいから大丈夫か。

まぁ、そこらへんはアンリさんとかがどうにかするだろう。


考えれば、この世界は俺のいた世界2つとはかなり違うな。

どこかがと言えば、神様が日常に介入しているところだ。

この世界の神様であるアンリさんは同時に一領主でもある。

そりゃ、権限は遥かに他の領主を上回るだろうが、基本傍観主義の他2世界の神様とはえらい違いだ。


というか、神様と日常的に話してる自分に震えるな。

異世界転移なんてものをしてから面白いことばっかりだ。

ほんと、退屈しないな。


「リオンも、大丈夫か?」

「う、うん。薬もらったよー」

「そうか、リオンも今度からは気を付けてくれよ?」

「大丈夫。次からは油断しないよ」


うん、なんかリオンが大人になってくな。

いや、リオンの方が大人なんだけど。

なんか精神的に。


「しかし、ご主人様。これだけは言わせてください」

「おう、なんだ」


至極真面目な顔でアンが代表して言ってくるので普通に対処する。


「口走っていたことは私たちの偽りない真実ですのでご安心ください」

「あれでどう安心しろと!?」

「つまりですね。薬に浮かされていても、私たちを捧げる相手はご主人様だけだということです」

「お、おぅ、そうか」


安心していいのか……?



「よお、起きたのか」

「おかげさまで」


アンリさんが部屋に入ってきた。


「もちろん、次にも行くんだろ?」

「俺としてはもう無理はしたくないんだが……」


小動物のような目で見つめてくるリオン。


「ついていくしかないよなぁ」


「……そうか、実力的には申し分ないし、許可してやろう」


なんだ今の間は。


「実力と言えば、お前があそこまでやるとは思わなかったぞ。俺とやった時はもっと無力じゃなかったか?」

「神様とそこらのを一緒にするなよ」

「それにしてもだ。あれも一応領主だぞ? 遥かに格上だったはずだ」

「だからこそだろうな」


俺に負けるなんて万に一つも思っていない。

だからこそ、俺の初撃は入ると踏んでいた。


「あんな隙しかない奴そうはいない。俺は俺のままだ」

「……まぁ、本人がそう言うなら強くは言わないでおくか」


そうしてくれ。

期待なんてものを向けられるのは苦手なんだ。

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