ルート選びは慎重に
「これは失礼した。私はこの辺りの領主をしているランメルという。以後、よろしくお願いしたい」
領主様も教えてもらえるとは思っていなかったようで、すぐに引き下がった。
出来る人だ。
「いや、まぁ、ご領主直々に挨拶されておいてなんなんですが、俺はこれ以降あまり関わることはないと思いますよ?」
「それでも、ですよ。人の縁というものは会えば会うほど、共にいればいるほど強くなるものだと考えています。つまり、私とリブレ殿の縁はとても希薄です。しかし、それもゼロとは程遠い。口約束でも、互いを尊重する意思を明らかにするのは大切なのですよ」
含蓄ありすぎる言葉だなぁ。
流石、領主なんてもんをやってるのに驕った様子がないわけだ。
人の精神の完成形に近い場所にあるのではないだろうか。
悟ってる的な。
「そういうことなら、よろしくお願いします」
俺は出された手を握る。
一般庶民どころかこの世界だとホームレスよりも根無し草な俺がリオンといるだけで領主様とコネクションが出来るんだもんな。
やっぱリオンって凄いんだな。
「して、バンフリオン様。こちらにいらしたのは?」
「うん、パパが折角だから挨拶回りしてこいって言ってたからねー。パパも若いし、そう簡単に私に譲ることはないだろうけどー」
「そうですね、次の世代の育成は現在の世代である私たちの最優先事項と言っても過言ではございません。バンフリオン様は実力も申し分ございませんし、いい頃合いでしょう。ところで、この後はどういったご予定で?」
「特には決めてないよー。弟君と相談して、次に行くところも決めないとだからねー」
「そうですか。では、ぜひうちに何泊かしていってください。最大限のおもてなしをさせていただきます」
「だってー。どうするー?」
リオンがこちらを見る。
そこはただでもらえるものはとことんもらうことで有名な俺。
「お世話になります」
「早く次のところにいかないのー?」
「まぁ、落ち着け。こんな行き当たりばったり旅じゃダメだ」
適当に行きたいところから行くとかやってたら俺の寿命が来てしまう。
ここに滞在させてもらうという話で、年単位で日数を聞かれたときは焦ったからな。
寿命が違うから、当然時間感覚も違うのだ。
「ちゃんと予定を組んで、どういう手段で行くのかまでしっかり知っとかなきゃいけない」
今回みたいに辿り着くまでに死の危険を感じるようなことにはなりたくない。
「というわけで、洗いざらい吐いてもらうぞ」
「なんか弟君の顔が怖いよ……」
そりゃそうだ。
リオンにとっては普通の道程でも俺にとっては死出の道だ。
必死にもなる。
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