特定人物の敵視は珍しい
どうにかリオンの拘束から逃れ、座りなおす。
「でだ。こんな感じでこっちに来たやつの前例はあるのか?」
「ないから困ってるんだ。知らない奴ならその辺に放っておいてもいいだろうが、知らない仲じゃないからそういうわけにもいかん」
「本音は?」
「これ以上バンフリオンちゃんに嫌われたくない」
素直すぎる本音だな。
てかそのちゃん付けは直ってなかったのか。
「もちろん、脳死の奴らはこっちに来るがな。万が一、そいつらが帰る時にはその記憶をなくして帰させている。だが、お前はそもそも体にも脳にも問題がないからな」
「第六界で俺みたいな状態になってこっちに来たやつとかいなかったのか?」
「いや、お前の状態なら普通は死んでるからな。お前の周りによっぽど腕のいい
改めて言われると怖すぎる。
今この瞬間にも死んでおかしくないってことなんだもんな。
こっちで4日ってことは向こうでは1か月弱くらい経っているだろうからまだ生きてるってことは尽力してくれているんだろう。
「本当に俺に出来ることはないのか?」
「ないな。こっちでお前が死んだらそれこそ本当に死ぬんだからな。何もしないことを勧めるぜ」
うーん。
どうしたもんかなぁ……。
何も出来ないと言われてもそんな簡単に割り切れるもんでもないし。
何もしないと不安っていうのは増殖するもんだ。
「なら、バンフリオンちゃんと一緒に行動したらどうだ?」
「どういうことだ?」
「そろそろ次世代の育成をと考えていてな。各諸侯のとこにバンフリオンちゃんを向かわせようかと考えてるんだ。いくら強いと言っても女の子だからな。一人旅はあまりさせたいものではない」
前に会った時はしっかり一人旅してたけどな。
「俺がついていっていいのか? 腹心の1人くらいいるだろう?」
「いるにはいるが、そいつの役割は俺の補助だ。いくらバンフリオンちゃんのためとはいえ、出すわけにはいかない」
「なんかいなかったっけ? リオンに好意を持ってるっぽい奴」
アンリさんの顔がスッと真顔になる。
「あんなのにバンフリオンちゃんをやるくらいならお前の方が数百倍マシだ」
「何があったんだよ」
男親というものは大抵娘に近づく男は敵視するものだが、こんなに特定人物に対して敵意を持つのはレアケースじゃないか?
どうやったらそんなに嫌われることができるんだ。
「いや、やることがあるのはありがたいんだけどさ。それには命の危険はないのか?」
こっちの手元には小太刀がない。
死んだら終わりというのはどこでも変わらないが、装備が弱くなっていると不安なのだ。
「あるぜ? どんないちゃもんつけられるかわからないからな」
「逆にあいさつ回りでなんで危険があるんだよ……」
どうせそうだろうとは思ってたけど……。
バァン!!
俺がどうしようか迷っていると、ふすまが勢いよく開いて、エルフが突入してきた。
なにごと!?
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