芸能人なんてどうでもいい

「とまぁ、予想だけはついたんだが、流石に俺にも受け入れがたくてな。長に確認取ってもらいたいんだよ。噂について何も知らなかったら確定だ」

「言ってはみるがのぅ。お主のせいで関係はこれ以上ないほど悪いからの。まともな返事をもらえるかどうかはわからんのじゃが」

「そこはまぁ、王様の外交手腕が光るところだよな」

「適当なことを言うでないわ」


エルフと俺の相性は最悪だからな。

王様に任せるしかない。


これで正式な回答として長が関わっていないことが明らかになれば長の息子を言及できるというものだ。


「今打てる手はそんなもんか。噂を否定して回っても逆に興味を引いてしまうだけだからな。知らぬ存ぜぬで押し通したほうがいい」

「泣き寝入りするんですか」

「いやいや、ちゃんとツケは払わせるけどな。こういう噂って言うのは言われている本人だけは程度の差こそあっても確実に損するようにできてるんだよ。その損を少しでも抑えるためには大人しくしているのが1番だってだけだ」


だから有名人たちも答える必要のないプライベートな詮索に対しては口を閉ざすことが多い。

余計なことを言わないのが好手だと理解しているのだ。

というか、なんでそんなことまで他人に言わなきゃならんのか。

手の届かない人の恋愛事情なんか詮索してないで自分のことを心配した方がいい。

仮に有名人が不倫とかしていたとしても、それは当人たちが解決すべきことであって、謝罪会見とか開く意味がわからん。


「とりあえずは、静観ってことですね?」

「そうだな」


何かを仕掛けた側にとっては、なにも起こってないのが一番不安なんだ。

それをエルフの少女誘拐と、今回の噂の件で短期間に2回も潰されたらどうしてもボロが出やすくなるだろう。

俺としては確実に長の息子だろうと思っているが、レインを俺から引き離したとしてどうするつもりだったのだろうか。

俺のところから離れれば自分のところにくるとでも思っていたのだろうか。

もしくは力づくでどうにかなると思っていたのだろうか。


「じゃあ、帰りますか?」

「そうだな」

「……ん、ねむい」


時刻は昼前。

夜行性に転換しようとしている今、寝る時間なのだ。

この報告に来るのは俺だけでいいと言ったのだが、2人とも健気についてきてくれたのだ。

レインは当本人だからともかく、プリンセはUNOのアドレナリンが切れて眠いのに頑張ってついてきてくれた。

オーシリアは杖になって俺に運ばれているだけだった。

こいつはもう少し周りを見習った方がいい。


「あ、僕たちはちょっとシャワーだけ浴びますので」

「俺もその後にシャワー浴びるよ」


やっぱ寝る前にはさっぱりしとかないとな。



「では、おやすみなさい」

「うん、おやすみ」

「……おやすみ」


いつも通りのベッド。

あと1週間後には戦いが待っているとは到底実感できない穏やかな時間。

あー、戦いたくねぇー。

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