プリンセの才能

「お前だよな? 俺がレインとプリンセを嫌々縛り付けてるって噂流したやつは」

「え、なんのことですか? そんなことよりレインちゃんと別れたらどうです?」


とりあえずはわかりやすい少年の方から来てみたが。


「お前よく嘘ついてるのにさらにこっちがマイナスのことを言えるよな」


噂に心当たりがなくて後半のセリフが出てくるのならわかるが、しっかりこいつが犯人なのに悪びれもせずに言えるのがヤバい。

ぶっ壊れてる。


「よし、とりあえず犯人1確定だ。お前1つしか噂流してないよな?」

「ひゃ、ひゃい……」


何故少年が満足に喋れていないかと言うと、プリンセにそれはもうボコボコにされたからである。

この頃手加減というものがわかったきたらしく、大きな後遺症を残すようなこともなく、意識を失わせずにボッコボコにできるようになったようだ。

やられている側は意識を失った方がまだ苦痛を感じなくて済むので、このプリンセのバージョンアップデートは受け入れたくないものであろう。


「しゅ、しゅみましぇんでひた……!」

「……ゆるさないけど、とりあえず、やめてあげる」


あの謝らないことで俺の中で有名な少年が謝っただと……!?

前も生意気で俺の中で有名なオーシリアを配下にしていたし。

プリンセは人の上に立つ素質が人一倍あるのかもしれない。

まぁ、基本的にそんな才能はあまり役に立つことはないんだけども。

族長の娘としてはこれ以上ない才能かもしれない。


「問題は次なんだが……」


レインを俺から引き離すというのは、これから戦いを控えている人間にはし辛い発想だと思う。

レインが大切な戦力だっていうのは周知の事実だし。

ということは人間が流した噂ではない可能性が高い。

少年ではないことは今はっきりしたので、他のエルフとなると、正直関わりのある人が少ないから微妙だな。

今日、報告に来てくれる予定の少女たちの親に聞いてみるか。



「……というわけなんだが、なにか心当たりはないか?」

「すみません、心当たりというものは……」


エルフの少女たちが攫われかけた件について探りを入れていたものの報告だ。


「ただ、私たちの娘をあそこに誘導した人はわかりました」

「お、確定じゃん。それは誰だ?」

「……長の息子さんです」



あー。

あの七光りクソ野郎か。

長の名前をかたるっていうのもあいつなら普通にやりかねんし。

「長から言われたんだ」とか言っとけば仕えてくれている人達も動かせるか。

だが、そんなことをする目的がわからないよな?


「今回の件と、関わりはないのでしょうか?」

「なるほど?」


今回の噂もドラ息子がやったと仮定すると。

目的はレインと俺を引き離すこと。

噂の目的は人間からレインに対するイメージを悪くすること。

なら、少女誘拐の目的は……?


「レインの人間に対する印象を悪くするため……?」


まさかそんなことのためだけにあんなことを……?

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