噂の元凶はそれぞれに

正直、犯人探しとかしないでゆっくりしておきたのだが。

俺はともかく、レインを狙った攻撃があるのは見過ごせない。


「やるしかないかなぁ……」

「お願いします」


おぅ。

レインがいつになくこちらに身を乗り出してきて言う。


「リブレさんの姑息且つ陰湿な手口で見事犯人を絶望に叩き落してください」

「それは褒めてるのかな?」

「もちろんです。頼りに頼ってます」


とても頼られているとは思えない単語ばっかり並んでいたが。

もうそれはいつものことか。

素直に頼られていると喜んでおこう。

そうしよう。


「よし、では悪辣極まる頭脳を働かせることにしましょうかね」

「いえ、そこまでは言ってなかったですけど……」

「あ、そう?」

「そんなにニュアンスは変わらないですけど」


合ってんじゃん。


「とりあえず、噂2つは別々の人物が流してる。方向性が違いすぎる。仮に一緒の人物のカモフラージュだと考えてみると、この時間がない中でそんな小細工をしたら本命の目的までたどり着かない。2つの噂があることは互いにあまり考えていなかったはずだ」


2つの噂は互いに逆のことを言っているわけではないにしろ、俺とレインの関係の捉え方が違う。

あと数日でけりをつけなくちゃいけないのに同一人物がそんなことをするわけがない。


「で、この噂で得する奴を考えてみるか。1つ目のは俺を悪者にしてるから、俺への不信感を募らせるためかな。問題は2つ目なんだが、レインに対してを期待する奴を近づけさせたいのか。それか共に戦うことに対する不信感を持たせたいのか」

「誰も得しないことが多くないですか」

「むしろやりやすいな。それで少しでも得する奴がいたらそいつがほぼ真っ黒のグレーだ」


1つ目の方が簡単そうか。

内容と、俺への不信感を募らせることによってどうなるか。

レインとプリンセが俺から引き離される、かな。

その点について俺に敵対心を持ってるのはプリンセのお父さんとエルフの少年。

過激さで言えば、プリンセのお父さんもしそうであるが、そんなことをするとプリンセが今度こそ怒って嫌われてしまことをわかっているし、そんなことをするほど考えなしじゃない。

となると、考えなし代表のエルフの少年が第1候補だ。

というかそれ以外考えられない気がする。

違ったらまたその時考えよう。


2つ目の方は、これもまたレインを俺から引き離したい意図を感じる。

いや、俺とは限らないのかもしれないけど、とにかく人間との関係性を悪くさせたいというか、そんな印象を受ける。

そんなことを望む奴って誰だ……?

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