ゲームも真剣です

「も、もう一回です!」

「はいはい……」


ここまで俺6勝、プリンセ3勝、レイン1勝。

非常に分が悪いが、負けず嫌いを発揮してまだまだ続く。

ちなみに今回も俺は目隠ししているのであしからず。

まぁ、途中までは忘れられてて3連勝したところで咎められたんだけども。


「もはや俺、自分のカードも見えないんだけど」

「あ、そんなにですか?」

「うん」


まじで見えない。


「このくらいでどうですか?」

「あぁ、それならギリで見える」


後ろからレインが整えてくれるが、首筋にかかる吐息が妙になまめかしい。

あれだな。

五感のうち一つが封じられてると他の4つが鋭くなる的な。

心なしかいい匂いもするし。

同じ石鹸使ってるはずなのにこの違いは何なんだろうな。

こればかりは神々は何を考えて人を設計したのだろうか。

全員が良い匂いだったら一番いいと思うんだけどな。

そうなると、それが普通になって意味がなくなるとかいうのはおいとくとして。


「あがりだ」

「……むー」


実は負けず嫌いなのはプリンセもなので俺がすぐ上がったことに不満そうな声を出す。

顔見えてないからわかんないけどむくれてるのではないだろうか。

そもそも俺がこのゲームが得意だから引っ張り出してきたわけだからな。

そう簡単には負けれないぞ。

やってる数も違うわけだし。


さてさて。

一旦目隠しを外して2人の泥仕合たたかいを見物する。

なぜ泥仕合と表現したのかと言うと、2人とも初期枚数の7枚から増えているからだ。

ゲームの性質上仕方のないことなのだが、互いの足を引っ張りあって終わる気がしない。

プリンセ12枚、レイン17枚。

長いな。



「勝ちました!」

「……もう1回」


レインが勝った。

UNOはもちろん実力はあるが、運要素もそれなりに含まれており、絶妙なバランスと言えるのでけっこういつでもだれでも勝てるチャンスがある。

そして負けず嫌いはチャンスがあるとやらずにはいられないのだ。

これはかなりの時間をUNOだけで起きてられそうだな。

カードの完成度はとてもじゃないが本家には遠く及ばないのだが。

道具の質は遊びの面白さには比例しないんだな。

缶蹴りとかゴミ蹴ってるだけだし。

鬼ごっことか何も使ってないし。


2人の試合が白熱して終わらないので大抵1位抜けしている俺が昼食(真夜中食)を作ることになった。

表現をどうするのか迷ったのだが、夜食というのは違う気がする。

なんか体に悪そうじゃん。

これは別に体に悪い行いではないから。

他のタイムゾーンで生きてるだけだから。

カナダ時間とかで。

この世界にカナダないけど。

そもそもここ日本じゃないけど。

まぁ、体感の話だ。


「サンドイッチだ」

「なんか前もそうじゃなかったですか?」


そう言いながらも手に取るレイン。


「ここでは手に取りやすいようにと思ってのことだぞ?」

「あ、そうなんですか? ありがとうございます」


前は面倒だったからだけどな。

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