訓練後の一時

「今のが避けれてたなーっていう人?」


一応聞いてみるが、手が上がるわけもない。

そうだよなー。


「こんな感じで、必ず避けれない攻撃はあるんだよ」

「いや、まぁこんなのがそこらじゅうにいたら困りますけどね」


それは確かに。


「まぁ、こんなのはいないにしても、それなりにヤバいのはいるわけだ。レインがそうだが、絶え間なく魔法が降り注ぐ中を無傷で避けろと言われても無理だろ?」


うんうんと頷く上位陣。

レインとのタイマンっていう特訓があったからな。

身に染みてわかってるだろ。


「あんな感じで来られると、どうしても避けきれないだろ? だから、どうやって防ぐかが大切なんだよ。で、防ぐ方法なんかに関してはキラ、レイン、頼んだ」

「リブレさんはステッド・ファストで解決ですもんね」

「そういうことだ。属性のある魔法に関しては知識がゼロに等しいからな。そこらへんは専門家に任せるよ」


バトンタッチを済ませたところで俺は裏に引っ込み、許可を貰っているルーリアの自室の1つのソファーに倒れ込む。


「あー、きつい」


いくらなんでもきつかった。

まさかあの数全員を1人で相手する羽目になろうとは。

もう全身がプルプルしてる。

筋肉痛というか、もう疲労でどうにもならない感じ。

あー、もう動けねー。


あれだけ偉そうなこと言ってた手前、情けない姿を見せたくないという謎のプライドが出た俺は、ギリギリの体を鼓舞しながらしゃべっていたのだ。

まぁ、最後は耐えきれずに脱落したわけだが。



「……お疲れ様」


俺がうつ伏せに倒れたままでいると、暇なプリンセがやってきた。

ちなみにオーシリアは部屋に備え付けのお菓子を食べている。

良いホテルとかに行くと、部屋に用意されているお菓子とお茶の一式。

あれのめちゃくちゃ豪華なバージョンだ。

さっきから延々と食ってる。

あれ、あとでお金取られないよな……?


「あー、プリンセもお疲れー」


俺が気絶させるようなことはあまりできないし、一気に大人数を倒すことなど出来ないので、運んでもらっていたプリンセの負担は少なかったとは思うが、それでも大人を2人ずつとか運んでるんだ。

言葉だけ聞いたらめちゃくちゃハードである。


「……あれくらいだったら、なんでもないよ」


本人が規格外だったとしてもな。


「……どうしたの?」

「ちょっと体が痛くてなー……」


年かもしれん。

こんなこと言ったら本当に年でガタが来てる人に怒られるか。

やめとこう。


「……マッサージしてあげようか?」

「是非頼むー」

「……もう緩み切っちゃってるね……」


自分でも自覚してる。

言葉尻がめちゃくちゃ伸びるし。


「力加減を間違えるなよ……?」

「……ん、学んだから」


やらかすと俺の体がただでは済まないからな。


「……んしょ」


プリンセが俺の背中の上に立つ。

ほう。


そのまま背中から太ももにかけてをふみふみしてくる。

なるほど。

これならあまり力加減は関係ない!


「む、面白そうじゃな。わしもやるぞ」


オーシリアも参戦。

体重がちょうどいいなぁ。


バン!


大きな音が聞こえたのでそちらにどうにか顔を向けると、ルーリアがドアに手をついて倒れるのを堪えていた。


「そういった趣味がおありでしたのね……」

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