商売根性逞しい

「で、なんだいこの監視は」

「必要最低限のストッパーだよ」

「にしては、面子が豪華すぎないかい?」

「いや、これでも足りないね」


ハンネが薬の調合するのに俺、レイン、キラ、ついでにプリンセとオーシリアがいる。

こいつが暴走しているときの膂力は半端じゃないからな。

念には念を入れておかねば。


正直、俺たちに専門知識などないので、ハンネが適当にヤバいものをぶち込んでたらわからないのだが、1つ入れるごとに俺の「それは大丈夫か?」という質問に対する返答を強制。

感情を視てしっかり判断することにした。

途中で、それ自体は大丈夫でも混ぜるとヤバいやつもあるかもしれないことに気づき、質問を「それを入れても薬は人体に有害にならないか」という質問にした。


結果、微妙な感情が帰ってきたため問い詰めたところ、それなりにヤバいのが出来る予定だったらしい。

危なかった。


「これで大丈夫じゃないかな」

「本当にそれは人体に有害じゃないんだな? 効果が保証できるんだな?」

「そんなに心配しなくても、横で見てたじゃないかー」

「それでも心配になるくらいお前は信用できないんだよ」


動けない俺に無理やり注射を打ったのを忘れたとは言わせない。



注射も終わり、あとは医務室で面倒を見てくれるとのことだったので、その場を後にする。


「キラ、あいつはあんなにこっちにいて大丈夫なのか?」


エルフと人間は仲が悪いんだし。

ばれたらやばいんじゃないのか?

いや、俺が不仲を決定的なものにしたという説はあるけど。


「それが、この頃エルフ達の活動範囲も広がってきているみたいなんだよ」

「どういうことだ?」

「ほら、人間の皆が逃げたじゃないか」

「あぁ」

「彼らは僕らがいるからあそこから出てきにくいだけであって、僕らがいなければ街の中くらいは歩くんだよ」

「なるほど」

「別に獣人族とは仲が悪いわけじゃないしね」


で、ちょいちょい遠出している奴がいるから少年もそんな感じだろうと思われてるってわけか。

まさか毛嫌いしている人間の城になんていると思ってないだろうからな。


「あ、そうそう。逃げたみんなと言えば、ちょっとだけ戻ってくる人たちがいるみたいだよ」

「……正気か?」

「商人の一団らしいんだけどね。ほら、僕たちも食料が怪しくなってきているからね。ちょうどいいかと許可したんだ」

「ふーん」


にしても、割と決戦が近くなってから戻ってくるというのは凄いな。

よっぽど商売意欲が高いのか。

まぁ、国相手の商売となれば儲かるのは必至だからわからなくもないが。


「どのくらい滞在するんだ?」

「3日ほどだと聞いているよ」

「その間は鬼ごっこは禁止だな」

「そうだね。巻き込んじゃったら大ごとだし」


今は普段なら治安を守っている兵士たちも避難しているか、訓練を受けているかだからな。

俺たちが目を光らせておいた方がいいだろう。

何かしないとも限らないし。


「リブレさん、そろそろ2時間ですよ」

「え!? 俺たち休憩してなくない!?」

「でも、皆さん集まってますし。時間は守らないとです」


うわー、だりぃー。

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