結局経験が大事です
「なら今まで僕はあなたに攻撃すら出来ていなかったと……?」
「当たり前だろ? 私はここにいたんだから」
絶望的な顔を浮かべる少年。
「キラは気配で、リブレは眼かな? レインは魔法の動きで、獣人族の方は鼻で、わかってたわよね」
「そうだね」
「あぁ」
「はい」
それぞれが肯定を返し、わかっていた獣人族の皆さんも頷く。
「鼻が利きにくい種族の方たちも違和感を感じてましたね」
該当する種族が頷く。
「まぁ、つまりですが、上を指導している皆さんや、今回加わられた皆さんは異変に気付くことが出来るのですよ」
「……じゃあ、上で学んでいる人達はどうなんですか」
「エイグ」
「はい」
エルメが呼んで、代表でエイグが答えるようだ。
「私は、彼らのように別に特異な技能があるわけではないです。ですから、戦う時にはとりあえず範囲魔法にすると決めています。こういう自分の姿を偽装できる相手や、姿を隠せる相手を少なくともあぶりだすことが出来ます」
「いや、でも、僕にはそんな技は……」
「それは、あなたの実力が足りていないだけです」
ばっさり切り捨てるエイグ。
「さぁ、自分の至らなさが把握できたところで」
エルメが炎を纏った扇を掲げる。
「反省しなさい」
扇を振るうと、炎が少年を包む。
「あああぁぁぁ!?」
「安心しなさい。死なない限り、ハンネが法律違反のあれこれまでして助けてくれるわ」
「非常に安心できないよな、それ」
俺は思わずツッコむ。
ハンネの治療を受けたことのある俺が言うんだから間違いない。
あの不信感はヤバい。
どうやっても悪い方にしか行く気がしないからな。
実際治っても後遺症とか怖いし。
未だに俺は筋肉痛を治してもらうべきではなかったと思ってたり思っていなかったり。
「う、ぁ……」
水魔法も使えたようで、必死の抵抗をしたようだが、服も燃え、床に倒れる。
「どうだい? これでもまだやるかい?」
「ま、参りました……」
その言葉を最後に少年は倒れた。
「キラ」
「うん、連れてきたよ」
「もう疲労困憊のあたしに何か用事が……?」
ちょっと見ない間にやつれたハンネがキラによって連れてこられていた。
どんな生活送ってるんだ。
「ハンネ、実験台だよ。治してやってくれ」
「ほう。ほうほうほう」
エルメが少年を示すと、ハンネはみるみるうちに回復し、観察を始める。
どんな体の仕組みしてるんだ。
「外傷は見た目よりひどくないね。MPの枯渇がひどい感じかな。ふむふむ」
生き生きしてるな。
ほんとにこいつに任せて大丈夫なのか?
「研究室に持ち帰りたいんだけど、ダメかい?」
「それだけは許さん」
いくら俺が少年を好きではないと言っても、人体実験につながりそうなのを看過するわけにはいかない。
「それは残念だ……」
「どうだい? 治せるかい?」
「それはもちろん。今ある薬でも治せるだろうけど、ちょっと思いついちゃったから作ってきてもいいかい?」
「それは安全なんだろうな」
「……たぶん」
非常に怖いな。
「とりあえず、医務室に連れて行こう」
この会話をしている間も少年は床に転がったままだし。
エルメが少年に厳しさを教えようとVR装置を使わなかったからシンプルに怪我してるからな。
流石に良心が働く。
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