お茶は1番何が好き?

なんとか鬼ごっこも目標の2時間以内に全員捕まえ終わり、一息つく。


「お茶が上手い……」


ちなみに、こっちで言うお茶とはいわゆる紅茶だ。

確か、紅茶も緑茶もウーロン茶も同じ茶葉で、発酵具合の差だったはずだが、どのくらい発酵させれば何になるのかまでは知らないので、どうしようもない。

ちなみに俺が一番好きなお茶はほうじ茶だ。

これを言うと、「おかしくね?」とよく言われていたが、いや、あれ美味しくね?


「疲れた、という感覚が合っているのかわからないですけど、流石にしんどかったですね」

「……つかれた」

「まぁ、人数が多かったからね。ずっと同じことをしていれば、気が滅入ることもあるよ」


約1名ピンピンしている奴がいるが、鬼側は概ね疲れ模様だ。

鬼ごっこを2時間連続でやることなんかそうないからな。

小学生でさえ休憩くらいするし、まず飽きて他の遊びになったりするはずだ。

今回のように鬼の交代のない鬼ごっこなんざ場合によってはいじめ案件だろう。


逃げる側はと言えば。


「恐らく、私が最初に捕まったわ」

「エイグ殿を優先して狙ってきているようでした」

「私も近くにいたんですけど、エイグ様の方に向かってました」


人が反省会をしている様子を、周りで獣人族が興味深げに聞いている、といった様子だ。

聞けば、負けた戦いを自分で反省することはあっても、意見を交わして集団で考えるといったことはないそうだ。

獣人族は個人での戦いを好む傾向があるし、鬼ごっこみたいな団体競技はやらないだろうから当たり前なのだろう。

鬼ごっこを団体競技と言っていいのかは疑問だが。



「やはり、大勢でやる場合だと実力者が狙われるケースが多いようですね。アミラ殿はどうでした?」

「え? あ、あぁ。私も、リブレ殿とプリンセに真っ先に狙われているような感覚があったな。やけにまっすぐこちらに来ていたし……」


自分に話がくると思っていなかったアミラは少しどもったが、すぐに調子を取り戻して自分の意見を言う。

これを皮切りとして、獣人族も会議に参加するようになる。

歯に衣着せぬ物言いが獣人族の特徴だが、こういう場合は忌憚なく意見をいってくれるので非常に参考にしやすい。


「リブレ君」

「ん?」

「そろそろ戦闘の方も……」

「あ、そっか。そういう話だったな」


逃げる動きが様になってきたら、希望者には戦闘訓練も開始するという話だったのだ。

前衛とかはやっておかないとなにより自分自身が不安だろうし。


「えっと、聞いてくれ。希望者は2時間後から戦闘訓練を始める。これは強制ではないから、各々判断してくれ。獣人族も希望者がいれば、是非」

「「「はい!」」」


予定だけ言って、とりあえず休憩のために城内に入る。


「主、わし寝たい」

「ここで寝るとこなんかない」


オーシリアとくだらんやり取りをしながら歩いていると、奥の方からエルメの声が聞こえてきた。


「だから、まだ早いと言ってるでしょ」

「なぜです!? レインはいいのに、なぜ僕はダメなのですか!」


あー。


「リブレさん、回れ左しないで下さい」

「あ、ごめん」

「いや、回れ右にしろというわけではなく」

「いやー、足が勝手に」


なにしろ、絶対関わらないほうがいい。

エルメと話しているのは、あのレインとの結婚を夢見ている少年だったのだから。

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