向上心も考え物

「僕も別に関わりたくはないというか、むしろ絶対に関わりたくない部類なんですけど。エルメさんが困っているようなので助けないとですよ」

「はぁー……」


確かに放っておくのもなぁ……。


「じゃあ、初手はレインじゃないか?」

「やですよ。僕が気にかけているっぽく見えるじゃないですか」

「俺も嫌だな」


ということで間を取って。


「どうしたのかな?」

「キラさん! とレインちゃん!? そしてリブレさん……」


テンションの起伏が凄い。

俺を見て心底嫌そうな顔するのやめない?

前まで「尊敬してます!」とか言ってたのに。

感情で思うだけなら俺もちょっと傷つくぐらいで済むのに。

そこまであらわにされるのはきつい。


「エルメ君、なんの話をしていたんだい?」

「えぇ、それが……」

「僕を上のクラスにあげてください!」



「えーと、上というのは……」

「野外で行っている演習に参加させてください! 基礎練習ばかりでは実力もつきません!」

「うーん……」


キラが俺をチラッとみるが、俺は首を横に振る。

一応、嘘は言っていない。

レインの近くにいたいだとか、基礎練に飽きたとかいう理由があったとしても実力がつかないと思っているのは確かなようだ。


まぁ、人によってどう実力がついていくかなんてそれぞれだし、冒険者の方々は別に基礎練をいっぱいしたというわけではないだろうから否定しにくいんだけど。

基礎練をした方がいいのは確かなのではないだろうか。

各家庭で大体レベル10くらいまで鍛えられるといっても、普通の人ならレベル10なんてすぐいくものらしい。


俺はクソみたいなレベルの上がり方しかしなかったし、レインは親が他界して鍛えられる機会がなかっただけだが、俺たちみたいにエネミーと戦ってレベルを上げなくても、素振りとかで上がるらしい。

この頃冒険者の方にそれを聞いた時はそっちの方が安全でいいじゃんと思ったが、効率は著しく落ちるらしい。


まぁ、実戦に勝る訓練はないってやつだな。

だが、それも実戦に耐える何かがあっての話だ。

俺の場合は正直、たまたま生き残れただけというところがあるが、まぁ、運もその1つってことで。


「で、エルメ的には?」

「無理だわ。このレベルが上に加わっても0どころかマイナスよ」


絶望的な評価じゃん。


「いえ、この年にしてはやれる方だとは思うわよ? でも、レインちゃんやプリンセちゃんがいるから。そのレベルには遠く及ばないわ」


その点に関してはこの2人とかがおかしいって説はあるけどな。

例外くらいでないと大人に混ざって戦うには力不足ってことだな。

大人の方が多く生きてるんだからより強くなっているというのはある意味当然のことだからな。

それを上回る才能や努力があることは否定しないけど。


「エルメ君がダメって言うならダメじゃないかな」

「そんなの! この人が言ってるだけかもしれないじゃないですか!」


エルメのこめかみがピクピクッと動く。

それ以上はやめとけ……!

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