ホウレンソウはしっかりと

コンコン。


特訓を始めて6日後、朝食の時間にレイン家を訪れる者がいた。


「はーい」

「邪魔するぞ」

「お、アミラじゃん。こんちわ」

「……こんにちわ」

「あぁ、お前もここにいたか」


チーター族のアミラと虎族のプリンセはお姫様同士だ。

別に軋轢があるわけではないらしいが、性格的にのんびりしているプリンセと何事もさっさと進めたいアミラではそりが合わないようだ。


「で、ここへは何しに?」

「いや、幻想級ファンタズマルに対抗する兵力を連れてくる約束だっただろう? やっとこっちに来れたのだが、一応リブレさんにも挨拶をと思ってな」

「それはそれはご丁寧に」

「そのことで話があるんだ」


気付けばアミラの後ろにキラが立っていた。

アミラも突然後ろから声がして飛びのいている。

そういうのやめろって。

人間不信になるだろ。


「どうしたんですか? キラさん」

「ごめんね、レイン君。ちょっとリブレ君を借りていくよ」

「え」


俺は襟首をキラに掴まれ、景色がパッと見えなくなる。

と同時に首が締まり、呼吸が出来なくなる。

この前から疑問に思っていたこのシステムの真実がわかったぞ。

やっぱり苦しいんだなこれ。

あれか。

キラがこっちが意識が消えないようにコントロールしてるのか。


あ、でもこれ酸欠で死ぬわ。

もうちょっとで意識が途切れるかどうかというところで周りの景色が見えるようになる。


「うおっへぇ!」


体が酸素を取り込もうとえぐい咳をする。

俺今なんて言った?



徐々に落ち着き、周りを見るともはや見慣れた謁見の間だった。

王様が怒ってるみたいだ。


「俺なんかしたっけ?」

「なにもしなかったから怒っておるのじゃよ。お主にはわしがどう思っているのか言わんでいいから楽じゃな」

「いやー……」


俺じゃなくても今回はわかったと思うぞ。

形相が凄いし。

怒髪冠を衝くって感じだ。


「それカイルさんがそこにいるのと関係ある?」

「まさにそのことじゃな」


ほう。

なんかしたっけ俺。


「お主な。ドルガバに協力を要請しておるならそう言わんか!」

「あれ?」


言ってなかったっけ?


「こちとらいきなりカイル王が自ら兵を率いて戦争に来たのかと思ったんじゃぞ!」

「あー……」


確かに今は和平していると言っても、以前対立していた国が兵を引き連れてきたら流石にビビるか。

幻想級と戦うことになってるから全員これでもかってくらいフル装備だろうし。


「まぁまぁ、どっちにも人的損害は出なかったんだから、いいじゃねぇか」

「しかしな、カイル殿! こやつはしっかり言っておかんとまたやるのじゃぞ!」

「あぁ、そこの心配はしなくていいさ」


お、カイルさんが弁護してくれるらしい。


「どうせ言ってもまたこいつはやるからな。そんなもんだと思ってこっちも動いた方がいいに決まってるさ」

「弁護じゃなかった!」


思いっきり貶された!

まぁ、俺も自分が言われて出来るようになるとは思ってないけど。

そこまではっきり言われるとなんだかなぁ……。

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