無理をすれば体にくる

断言しよう。

ここが極楽だ。


家に帰った俺はレインとプリンセから労われ、ついでにオーシリアからも褒められた。

まだ回復しきっていなかった俺はレインにうつぶせに膝枕され、プリンセとオーシリアに背中やら足やらをふみふみされて癒されていた。


レインの太もものふにふに感。

プリンセとオーシリアの心地よい重さ。

全身の疲れが取れていくようだ。

実際多少取れているんだろう。

最高だ……。


「……重くない?」

「全然だー……」

「……リブレさん、今見せられない顔してません?」

「そんなわけないだろー……」


実際はしてるかもしれんが。


「まぁ、今日は頑張りましたからね。大目に見るとしましょうか」

「そうだよね? 俺頑張ったもんね?」

「はいはい、偉い偉い」


レインが俺の頭を撫でる。

おおっ。

なんかあれだ、ゾクゾクっときたぞ。

なんか寒い感じもするし……。


……。


「プリンセ」

「……?」

「俺を布団まで運んでくれ。いつもみんなで使ってるやつじゃないのがいい」

「どうしたんですか?」


「俺、これ風邪引いてるわ」



そこからは俺は働かない頭を絞り、風邪の対処法を思い出す。


ネギのやつってどうだったっけ……?

あれは迷信だよな……。

あ、それは首に巻くやつで、食べるのはいいんだっけか……。

ダメだ、考えられない。


やっぱとりあえず寝とけばいいってとこはあるか……。

確か、汗をかいたらこまめに着替えるってのがあったよな。

もう面倒だから寝ちまおう。

体が疲れて風邪を引くとか、もう年かもしれんな。


「大丈夫ですか? 何かできることあります?」

「……お肉、食べる?」

「大丈夫だ。寝とけば治るだろ。着替えだけ用意してもらえると助かる。あと、プリンセ。肉はきつい」


消化に悪すぎる。


「あと、それだけしたらここにいないほうがいい」

「看病しますよ!」

「いや、うつすかもしれない。俺はいいが、2人にうつると可哀想だ」


子供の方がきついって言うしな。

あれ、逆か。


「……わかった」

「プリンセちゃん、でも……」

「……こういうことは、リブレさんの方が詳しい。……みんな病気になるより、いい」

「それはそうですが……」


プリンセに押されて、レインも出ていく。


「何かあったら呼んでくださいねー!」

「あぁー………」



キィ……バタン。


部屋が暗闇に包まれる。

なんだかんだこうやって布団で1人で寝るのは久しぶりだな。

1年前は当たり前だったことが、今は少し寂しく感じる。

時の流れは早いものだ。

実際、俺はこの世界の1年を4か月ほどで過ごしているわけだから、そう感じるのも当然か。


あれ?

俺凄い人生損してないか?


……やめやめ。

身体が弱ってると思考もマイナスになるからダメだ。

寝よう。



「うぅ……」


重い……。

目を開け、お腹の上を見ると、オーシリアが大の字になって寝ていた。

なにしてんだ、こいつ。

ふと横を見ると、ベッドにもたれてレインも寝ている。

プリンセは床に丸くなっている。

結局、全員いるじゃないかよ。

オーシリアは杖なんだから風邪とか無縁だろうけど。


しかし、心配してくれていたのだろう。

先ほどよりは明瞭な頭で考える。

これで風邪引かれたら完璧に俺のせいだな。


汗をかいていたので上のオーシリアを横に転がしておいてもらっていた服を手に取り、もぞもぞ着替える。


「あっ……!」


声がしたので、振り返ると、レインが目を覚ましていた。

手で顔を覆っているが、指の隙間からしっかりこっちを見ている。


……それほんとにやるやついるんだな。





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