感想ももはやいらない時がある

「いやー、楽しませてもらったぞ、リブレよ」

「さいですか……」


HPが4割ほどになって起き上がれるようになった俺はレインにもたれかかったままだが、俺を労いに来た王様たちに応対する。


「キラとあそこまでやれる者はそうはおらんからな。キラにとっても良い刺激となったであろう」

「は。リブレ君にしっかりと準備をさせたら僕もどうなっていたか……」

「うむ」


うむ、じゃねーよ。

あれ以上どうしろって言うんだ。


「さて、冒険者たちよ」


突然の王様の登場に跪いている冒険者たちに王様が向き直る。


「リブレが示したように、たとえキラ相手であっても対抗する術は存在する。もちろん、リブレはキラと同じく二つ名ダブル持ちである。よって、これを真似しろと言っても出来るものではないな。しかし、参考にすべき点は多くある」


そこで王様が一旦言葉を切る。


「失礼かもしれんが、今回お主らにはそう多くのことを求めておらん。わしにとって最優先はお主らの命じゃ。その上で、エネミーを相手できるのなら相手して欲しいのじゃ。いざとなれば撤退も出来るのじゃから。自らの能力も大事ではあるが、頭を使って、生き残ることを最優先に考えて欲しい」

「は!!」

「ではの」


王様と一緒にマレイユさんとルーリアもこの場を去る。

工夫が大事って言いたかったのかな。



「いやー、上から見てると面白かったわ」

「全くだな! 互いに縦横無尽に街中を崩しながら走り回っていてな! 爽快だったぞ! はっはっは!」


エルメとケインも感想を口にする。


「お前らも1回してみたらどうだ?」

「遠慮しておくわ。リブレの記録を超えられる気がしないから」

「俺は手合わせならしたいのだが!」

「やめとけ。その余波で人が死ぬ」


街を壊しまくった俺が言えた義理じゃないかもしれんが。


「えっと、会議はまた今度行うから、とりあえずは勝手に動いてていいって言ってたよ。会議があるときは迎えに行くね」

「頼む。ちなみにあの崩れた街は?」

「とりあえずはおいていくよ。幻想級ファンタズマルを退けないと話にならないし」

「それもそうか」


後で賠償請求とかないといいなぁ。


「じゃあ、今日は帰ってもいいんだな?」

「そうだね。幻想級が来るまであと1か月半ってところだし。これから忙しくなるだろうから、しっかり休んでてよ」

「ありがたい」


「あ、彼らのレベル判定についてなにか案はあるかい?」

「……もうなんかエネミー倒させてからその速さでいいんじゃね?」

「あ、そうか。対人戦じゃないもんね」

「まぁな」


もうなんでもいいだろ。



「レイン、今どのくらいだ?」

「7割ってとこでしょうか」

「ま、いいか」

「……まぁ、歩けるとは思いますけど」

「正直、帰りたい」


今日頑張りすぎ。


「そうですね、僕がいれば回復は出来ますし」

「……ここじゃ気も休まらないよね」


獅子奮迅の逃げを見せた俺はここではもう注目の的なのだ。

獅子があんなにみっともなく逃げるかどうかは別として。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る