すっかり忘れておりました

「え、なに? もしかして今回の指揮もとることになる?」

「さあ? それはわからないけど、なにかしら意見は求められるだろうね」


うーん、そんなこと言われてもなぁ……。

未知の生命体の対処法なんて地球では習わないわけで。

知識どうこうの問題じゃないしなぁ。


「始まってみないとなんとも言えないな」

「それはそうでしょうね。ところでどうしてここへ?」


チンドル女の方が当然の疑問を口にする。


「それは王様に会いに来たからだよ」

「いやそんな友達に会いに来たよみたいなノリで言われても……。そう簡単に会える方じゃないんだけどなぁ……」

「でも、ちょうどエルフの長と会っててさ。流石にいれないから遊びに来たんだ」

「遊びに? ここへ?」

「え? うん」

「なぜその言葉に違和感を感じないんだ……」


え?

なんで?


「ここは仮にも軍事対策室だぞ」

「気にしないって」

「「気にしてよ!」」

「流石双子」

「「そこじゃないから」」

「おぉー」

「「はぁ……」」


ため息まで一緒とは。



「お?」


腰のあたりで何かがもぞもぞと動く。


「ぷはぁ!」


鞄から杖が転がり出てきて人間の形になる。

あ、オーシリアのこと忘れてた。


「主、ひどいのじゃ! わしを放っておいてもう6日程たったのではないか!?」

「それはそうなんだけどさ、お前今みたいに出てこれるならなんで出てこなかったんだ?」

「そりゃあ、寝ておったからじゃ」

「寝てたんじゃねえか」


そりゃ出てこないわけだわ。


「起こしてくれても良かろう!」

「睡眠を必要としない杖の化身が寝てるとは思わんだろうが!」

「むぅ、それはそうなんじゃが……」


上手くオーシリアのことを忘れていたのは誤魔化せたようだ。



「む、そっちの二人は前にあったの?」

「え、えぇ、お会いしました……」

「話に聞いてはいたが、杖の化身とは本当だったのか……」

「そうか、お前らオーシリアの変身見るのは初めてか」


ま、普通は信じないわな。

俺は謎のゲーム脳によりけっこうすんなり受け入れられたけども。


「わしはオーシリアというのじゃ。見ての通り、主の杖じゃな。よろしく頼むのじゃ」

「「よろしくお願いします……」」


「ふむふむ、これが今回の主の敵の予測進路かの」


机によじ登ったオーシリアが地図をのぞき込む。


「そうらしいんだ。なんかわかるか?」

「そんなこと言われてものぅ……。わかることと言えば、進路に山がないことくらいかの?」

「……本当か?」


俺は気が付かなかったぞ?

地図に駆け寄り、一緒に覗く。


「む? この線は山に沿って動いているじゃろ? であれば、山を避けているとしか思えんじゃろう」

「山か山でないかは何で判断してるんだ?」

「この辺りには物見が多くあるじゃろう。ということは高台である可能性が高い。上手くこの線がここを通っていないのは物見を恐れておるわけではなかろう。ということは山を通りたくないのではないか?」


「タンドル、チンドル。これは誰が書いた?」

「数日前にドルガバから送られてきたわ」

「ということは書いたのはカイルさんか……」


これは信憑性が高いな。

でも、つまりどういうわけだ……?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る