暇つぶしはお散歩で

「プリンセ、また空から行っても大丈夫か?」

「……できれば空は嫌だよ……」

「だよな……」


自分が苦手だとわかってることに突っ込んでいく奴なんてそうそういない。

いるとしたら馬鹿か、相当向上心の高い奴だ。

向上心もあのレベルの高さを克服することに何の意味もないからな。


「となると夜になってから帰るか?」

「そうじゃな。必然的に夜の方が人目につきにくいしの」


夕方になり、日も落ち始めているのでそう時間もかからないだろう。

ちょっと時間を潰してから移動するか。


暇つぶしにプリンセを抱いて、オーシリアを背中にのせた状態で城内を歩く。

オーシリアが背中にとびのってきたと思ったら、プリンセが両腕をこちらに伸ばして「わたしも……」とか言うからこんなことになっている。

断れるわけないだろ!


ちなみに普通の状態ならちょっときついくらいで大丈夫だったんだろうが、今の俺は慣れようと思って軽鎧のようなものを着ている。

まぁ、異常に重りを背負って歩いているのだ。

マジでレベル上昇によって筋力値とかがあがらないのが恨めしい。


ちなみに、俺がレベル48になったことによってやっとHP、MP共に4桁を超えた。


HP:1215/1215

MP:1452/1452


レインがレベル36の時点で1112と1037だったからやっとそれを追い越せたかなって感じだ。



「そういえばプリンセもレベルあるんだよな?」

「ん? あるよ?」


プリンセが腕の中から俺を見上げてくる。


「ちなみにレベル聞いてもいいか?」

「えっと、46くらいじゃなかったかな……」


勝ったー!


いや、逆か。


負けなかったー!


6歳に負けてたらほんとにどうしようもなかったからな。

まぁ、プリンセが虎族のお姫様ってのを考えるとそりゃ教育も凄いだろうから微妙なラインになるのだが。

プリンセがランガルこっちに遊びに来ずに真面目にドルガバあっちで指導されてたら負けてた説はある。



「えっと、で、ここはどこだ?」

「わからずに歩いておったのか?」

「まぁ、適当に」


城を探検したのなんかレインと最初に来た時だけだぞ。

それもルーリアに見つかってそれどころじゃなくなったし。

それからは俺が用のあるところしか行ってないからな。

大抵は正面の入り口から謁見の間までの最短ルートしか使ってないし。


「随分と人気のない場所だな」


ほとんどの場所は見回りの兵士さんたちがいたりするのだが、それも見当たらない。


「まぁ、基本兵は外側を見回っておけばよいじゃろうからの。内側までは流石に厳しいじゃろう」

「外さえ見ておけば侵入はされないもんな」


俺たちみたいに空を歩いてくるとかいうトリッキーなことをしない限りは。

で、そんなのに一々警戒してられないし、この警戒も妥当か。


「でもリブレさん。そっちの方にちょっとだけ人がいるよ?」


プリンセが曲がり角の奥を指さしながら言う。


「知ってる人か?」

「ううん。知らない人の匂い」

「まぁ、知ってたらその人の名前言うだろうな」


エイグに続いて今度は誰だ?

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