ゴーストに息はできません

「とりあえずこの辺りは大丈夫か?」

階段からもう一度地下2階へと足を踏み入れる。

「さっき追いかけてきてたやつは奥に行くのが見えたけど…」

途中からは追いきれてない。見切れてからは他のエネミーならスルー・アイで追えるんだが、ゴーストはどちらにしろ視えないしな。


「んー?」

奥に見えるやつが増えてる…。しかも色が黄色っぽいやつと青っぽいやつがいるぞ?

そういえば最初に見つけたやつも黄色っぽかったかも。ってことは増えたのは青いやつか。

あの色はなんかに関係してるのか?


近くを照らしてみるが、やはり何も見えない。さっきも火の光が届いてる位置からいきなり出てきたからな。

今気づいたがこの松明の火はずっと燃えてるのに火が消えないのはどういう仕組みなんだ?いや、消えられても困るからありがたいのだけども。


どちらにせよゴーストに対する攻撃手段がないとどうしようもないな。

ねずみが道の端を走り抜けていくのを眺めながら少し考える。

…あれ!?おかしくね?さっきまでねずみとか一匹も見なかったぞ?もちろん、上の階でも。


ふと気づいた俺はとりあえずねずみを追う。

ステッド・ファスト。

俺も動きを止め、ねずみの進行方向を空気の層で閉ざす。

そこでリヴィ・バインドを出そうとしたところで目の前にゴーストが出てくる!

「おぁ!?」

ステッド・ファストで咄嗟に動けないからとりあえず小太刀を抜いて動けるようにしながら構える。


「消えてる?」

さっきまで目の前にいたやつが消えてる。

ちょっと俺が呆けてるうちに追っていたねずみが奥へと走り去っていった。

待てよ?この小太刀でさっきのゴーストが消えたと仮定するだろ?すると、この小太刀は魔法的なやつを大体打ち消すって感じの力だったからゴーストが魔法によるものだという推論が浮かぶ。

で、ここで魔法を使えそうなのっていうとあのねずみだけ…。


もしかして、ゴーストってエネミーじゃない?

ねずみが自衛のために出してる魔法によるものなのか?

大抵のやつはゴーストがエネミーかどうかなんてことよりその怖さで逃げることを優先するだろうしな…。もしかしたら本当に今まで気づかれてなかっただけかもしれん。

しかも、ゴースト自体には攻撃手段がないんじゃないか?

かなりの近さまで来ていたりしたが、HPに変動はなかった。多少MPが減っていたからそういう特性はあるんだろうけど。


となると出てくるゴーストをしっかりと小太刀でさばいた後にねずみをどうにかするか通り抜けてしまえばこの層もクリアということにならないか?ゴーストの色の問題は解決してないが。


自分の推論を信じ、ゆっくりと進んでいると前に赤色のゴーストが出てきた。その奥には赤っぽいねずみの姿もある。やっぱあいつが出してそうだな。

そう思いながら小太刀を構え、ゆっくり近づいていく。


すると、ゴーストが息を吸うような仕草をした。

いや、ゴーストだから息はできないだろ。

そんなことを考えていたから、直後に吐き出された火のブレスへの対処が遅れた。

ゴオオォォー!

「うそぉっ!!??」

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