階段はどちらにせよきついよね

「いや、階段長いわ!」

下へ降りる階段を見つけて下っている時に思わず叫ぶ。

階段といってもビルの1階分を降りるくらいかそれよりはちょっと長いくらいかなと予想していたのに延々と階段が続いていたのだ。

本来であればダンジョン内で大声を出すとか襲ってくれと言わんばかりの愚かな行為なのだが、階段にはエネミーがポップしない仕様らしい。


「単純にここで体力削られるな…。HP的な意味ではなくて」

この世界の疲労ってどうカウントされてるんだろうな。よくあるRPGの主人公は連日連夜動いていても全く休む必要がないというそれはもう勇者として相応しい化け物じみた体を持っているわけである。仲間たちも含めて。しかし、俺は一般人なので足に疲労も溜まれば歩きたくもなくなる。

階段を降りるときは体重の6倍の負荷がかかるっていう話をどこかで見たことがあるが、あながち間違いではないかもな。


「お」

やっとのことで地下2階に着く。

今更ながら少し先も見通せないほどの闇というのはかなり怖い。松明で照らせる距離なんてたかが知れている。地下1階では前の冒険者たちが残していったと思われるかがり火用の場所が用意されていたから逐一つけて行っていたが、ここからはそれもないようだ。

他の冒険者たちは楽しすぎじゃないか?3層構造の1層目しか行けてないとか。1層目はゾンビを縛っておいとくってことさえできれば普通に行けそうだったけどな。そもそも複数人で挑んでるだろうし。


「ん?なんだあれ?」

奥へと続く道の先に何かを見つける。

ぼんやりとしていてよく見えないが、もしかしてあれがゴーストか?

スルー・アイを発動して視てみると、映らなくなった。

なるほど。スルー・アイに映らないやつがゴーストか。


にしてもこの距離から見えているならどうにかしようもあるだろう。一番怖いのは不意打ちによるドッキリだからな。

ホラーゲームもビジュアルはもちろん怖いのだが、一番はやっぱり横から飛び出てくるとかだからな。


とは言っても怖いことには変わりないのでじりじりと近づいていく。

ほら、ね?いきなり上から現れたりするとも限らないし?一応気を張って進んでいくべきだと思うんだよね。

そう言えばだけどゴーストって色ついてるんだろうか。基本的には透明で目に見えないっていうイメージだけど、それじゃ攻撃のしようもないし。何らかの条件で見えるようにはなってるんだろうけど、そこを考えとかないとやばいかもな。向こうの攻撃もなにしてくるかわかってないし。


「うにゃあぁぁーー!?」

先の目標を見据えてじりじりと移動していると、目の前に真っ白のゴーストが現れて謎のスウェー回避からダッシュで逃げる。

「きっちりとフラグ回収していくなぁ!」

少し逃げたところで後ろを振り返ると、かなりのスピードで追ってきているのがわかる。

「なんでゾンビといいゴーストといい足が速いんだよ!」

あ、ゴーストには足ないか。


階段に辿り着き、ちょっと上ったところで後ろの様子を見ると、やはり階段にはこれないようだ。上の水場まで戻る気にはなれないが。長すぎて。

「はぁっ、はぁっ。一体、どんな、仕組みなんだ…?」

あの突然の登場の理由がわからない限りは迂闊に進めないぞ。


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