バグはどちらにも作用するよね

「で、魔王様って結局どんなやつなんだ?」

青年の攻撃魔術からステッド・ファストで身を守りながらリオンに質問する。

「えっとね、強いよー。使役してる悪魔も最上級だしー」

「悪魔が最上級だとなんか変わるわけ?」

「えっとねー、その悪魔が従えてる全ての悪魔の能力を使えるようになるんだけどー」

えぐいな。その悪魔が高位であればあるほど契約者は強くなるわけか。


「さらにねー?」

まだあんの?

「彼らは強いんだよねー」

いや、知ってるけど?

「そうじゃなくてー。精神的に。本来なら悪魔はここでは姿を保ってられないんだけど、彼らはその真価は発揮できないまでも存在できるんだよ」

なるほど。

「ってことは自ずと二人を相手取る必要が出てくるよねー?」

最悪じゃん。


「しっかし、弟君の防御は凄いねー!あいつも全然抜けないじゃん!」

事実、これだけ話すほどの余裕がある。青年の魔術を行使するための悪魔はそれほど高位のやつでもなかったんだろう。

「まぁ、こういうことしかできないからな、俺」

そう、度重なる危機によりステッド・ファストを乱用してた俺はこいつだけ異常なほど熟練度があがっており、ちょっとやそっとじゃ抜かれないレベルにまで達しているのだ。限界を試したわけではないのでわからないけれども。

多分そういうことなんだろう。


「でも俺は防御と妨害に関してはかなり自信あるけど、、攻撃手段が存在しないんだよ」

この忌々しい杖のせいで!なんだよこいつは!結局この杖手には持ってなくてもいいことが判明したんだよ。どこかに身に着けてさえいれば。ただし、他の物が装備できるかと言うとできなかったのだ。どうせ持ってないから無手で魔法を使ってるように見える。けっこう気味悪がられるんだよな。どうしてできるのかって。


「そうなのー?これはー?」

リオンがどこからともなく刀を取り出す。

「なにそれ?」

「えーっとね?なんか倉庫で迷っていた時に見つけたんだけどー。かっこよかったから持ってきたんだー」

あぁ、例の持ち主が迷ってた期間ね。

「ちょっとお姉さんには合わなかったんだよねー。ほら、お姉さんって大きな武器が好きでしょー?」

いや、知らねーよ。

「だからこれは合わなかったんだよねー」

リオンの言う通り持ってる刀は日本刀で小太刀とも言えるサイズだった。


「ちょっと持ってみてよ」

「ほい」

うん、持てるんだよ。スキルとかが全く使えなくなるだけで。

「あれ?」

使える。本来ならここでステッド・ファストが解除されるはずなんだけどな。なんか解除されない。


もしかしてこれ使えるのか?

あ、元の世界じゃないから一種のイレギュラー状態ってことかな?

「普通に振れる…」

逆に自分が動かなくなったりしないかとも思ったが、普通に動ける。

この世界だったら俺強いんじゃね!?

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