他世界に行くのは楽じゃない

「魔王の下で働いてたぁ!?」

めちゃくちゃ凄い人なんじゃね?先代の魔王ってことは魔王も不死身ってわけではないんだな。

「して、お客様。帰りたいのじゃな?元の世界へ」

「帰れるのか?」

ジャメさんのほうから核心に触れてくる。


「えぇ、方法はあるにはありますよ?前回の方にも一応方法はお教えしましたしね」

?」

俺はジャメの言った言葉に違和感を覚える。

「お教えはしましたよ?ですが、その唯一の方法というのも難儀なものでしてねぇ。成功する可能性は万に一つもございません」

そしてリオンをちらりと見る。

「お連れさんもいらっしゃるようですし、やめておいたほうがいいと思いますがねぇ…」


「まぁ、いるっちゃいるんですけど、さっき会ったばっかのやつなんであんまり気にしなくていい。無理だっていうのも聞いてみないと納得がいかないだろ?一応理由を教えてもらえると助かるんだが」

すると、ジャメは黙り込む。

そんなにダメなの?

「あなたがたの相性はよろしいようです。私としてはお二人が離れるような提案はしたくないのですが…。仕方ありませんね…」

「ねぇ聞いた?お姉さんたち相性いいんだってー!うれしいねー!」

いやそれどころじゃねーから!今しゃべってくれる流れだったじゃん!今までなんで黙ってたのにここにきてしゃべりだすわけ!?


「まあまあ、仲がよろしいのはいいことではございませんか。心配せずともお教えすますよ」

あ、そう?

「この世界と他の世界を繋ぐ扉は一つしかありません。そしてそちらは魔王様の管轄下にございます」

つまり?

「魔王様を万が一、いえ兆が一倒したとしてもその扉が開くことはありません。扉は魔王様の意思によってのみ開きます。つまり魔王様に謁見し、気に入られるほか帰る方法はないというわけです」

うわー最悪だ。魔王様とやらに会わずにちゃっちゃとずらかろうと思ってたのに。よく考えたらそういうシステムじゃねーと勝手に他の世界に行って勝手をやらかすやつがいるかもしれないしな。


「参考になったよ、ありがとう。まぁいきなり会ったりとか無謀なことをする気はないけど、なにか方法がないか探してみるよ」

「そうなされるとよろしいでしょう」

話を聞き終えた俺たちは寺を後にする。

「もし魔王様に謁見なさることが叶いましたら、ジャメは元気にしておりますとお伝えくださいませ。お嬢様におかれましてもお元気でお過ごしくださいませ」

「うん、伝えとくよ。お嬢様?」

「ほらーこれだけオーラがあるとね?お嬢様呼びにもなっちゃうわけですよー」

「うん、そんなオーラは見当たりません」


ん?

「また視線を感じる…」

視線の方向を振り返ると、そこには目玉が浮かんでいた。

「なんじゃそりゃ!!」

「お迎えがきたようですね。それではお元気で…」

ジャメさんのその言葉を尻目に俺たちの視界はねじ曲がっていった。


「で、どこだここ?」

「そうだねー。確か魔王様が住んでる小さな町だった気がするよー」

ってことは俺たちは魔王様にここに呼ばれたのか…。そして会いに来いと。

まだそんな段階じゃねーと思うんだけどな?

「まぁ家も一緒に移動させてくれたみたいだし、そこは良かったよー」

「ほんとだ」

そこは親切なのか。


「逃げれないのか?」

「移動系の魔術は妨害されてるみたいー」

さすが魔王様。逃げるなよってことか。


「見つけましたよ!!」

振り返ると俺が餅をぶつけた青年がいた。

「またお前…?」

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