百獣の王ってほんとにライオンかね?

「てか、レイン。俺たち森になんか倒すために行かなかったっけ?」


いよいよ考えが浮かばず、どうでもいいことを思案していると昔のことを思い出すものである。


「あ、ユラル・ラビットですか?」


そうそう、それそれ。

メタ〇スラ〇ム。


「食料とることに必死ですっかり忘れてましたね」


食いしん坊か!

いや、俺も忘れてたけども!


「あの時に狩れてたらまた展開が違ったのかな……」

「どちらにしろあの猪に襲われてそれどころじゃなかったですし」


そういやそうだった。

ずいぶんと昔のことのようだ……。



「てか、リブレさん! なに回想にはいってるんですか! ここを生き残れるかはリブレさんが思いつくかどうかに左右されるんですよ!」


そうはいってもなー。

虎だぜ?


虎。

主に密林とかに生息し、基本的には群れなど作らない。

自分の領域なわばりの中を闊歩し、一人で食っていける強さを持った生物。

特筆されるような弱点はなく、武装した人間でも簡単に殺られてしまう。

そんなやつらが集団になって襲い掛かってくるわけだろ?

いくら俺がクイズゲームのために知識無駄に貯めてるって言っても頼りにする知識ないんじゃしんどい。

ほんとにどうしよ?


虎って何科だっけ?

ネコ科か。

猫かー。

猫の弱点って確か首の裏だよな。

親が子猫をやばい時に連れてくときにそこ噛むから緊張して動かなくなる、みたいな。

いやまぁそもそもその特徴が獣人種に適用されてるかすら怪しいところではあるけれども。

いままで向こうの知識使えたし、できるってことにしとこう。

どちらにしろそんなとこまで近づく間に殺られるだろうけど。


強みの逆は弱みっていうのがあるんだけどな……。

物理的な強みの逆って手先が不器用とかそんなのだろ?

なんの役にも立たない。

あとは……、夜目が効く、か。

これは使えそうだけどな……。

そう簡単にいくもんなのか?

それにこれを使おうと思ったらそれなりの光量が必要になる。

しかもそれだけじゃ決め手にならないというおまけつき。



「リブレ君」


キラが帰ってきた。


「彼らは僕らが気づいてないと思ってるからかわからないけど、あんまり早くはないよ。ここだとあと丸三日はかかるかな」


お前はそんな距離をたかだか数時間で自分が往復できているという事実をもう少し重く受け止めたほうがいいと思うぞ。

そうだ。



「キラ、お前人一人くらいなら運べるか?」

「え? あ、うーん。どうだろう。ケインさんとかになると厳しいかもだけど、自分の体重よりある程度軽かったらいけるんじゃないかな?」


ケインは筋肉だるまだからな。


「なら、頼む。城からハンネ連れてきてくれ」


さらに数点お願いをして送り出す。


「え? キラさん戻るなら僕も一緒に連れて……」


レインが気づいた時には出発していた。



じー。

レインがめちゃくちゃこっち見てくる。


「なんだよ?」

「リブレさん、僕にばれないようにこそこそやってましたね?」

「じゃないと逃げるだろ?」

「いいじゃないですか! 帰っても!」

「じゃあ、今ダメになった」


お前がいないとこの作戦成立しないんだわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る