第17話

 鼻先でカンフルが折れる音ともに、強烈な刺激臭が彰夫を襲った。


 思わず顔をそむけて、彰夫の意識が戻った。どこかの部屋のベッドに居るようだった。見ると一糸もまとっていない自分を発見して驚いた。

 意識はもどったものの、身体の芯にしびれが残っていて、体躯は動かすことができない。やがてからだの上に、肌の温かさを感じた。それはやはり一糸もまとっていないテルミだった。

 わずかな明かりに浮かぶテルミの身体は、この世のものと思えぬほどの美しいプロポーションで構成され、甘美で柔らかい肌につつまれていた。

 テルミの黒い瞳だけが、奇妙に光り輝いている。ゆっくりとテルミの顔が近づいてきてその甘い息が彰夫の首筋にかかる。今度は交じりっ気のないテルミの香りが、脳に全体に染み渡って来た。


「やめろ…、テルミ」

「私は、欲しいものは絶対に手に入れる女なの…」


 彰夫は必死に抵抗を試みた。

 しかし、抵抗しながらも、徐々にテルミの願いに応えていってしまう自分が許せなかった。情けなかった。

 やがて彰夫の身体が動くようになると、ふたりは身体を入れ替えて、今度は彰夫の願いにテルミが応えていくようになっていた。

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