EX4 偉大なる天輝士 編 - grande cavaliere -

350 久しぶりの手紙

 もうすぐ春がやって来ます。

 寒い冬が終わり、光輝く季節が訪れます。


 このところ、手紙を書けなくてごめんね。

 旅も終わりに近づいて、いろいろ忙しい日々が続いてました。


 いろんな人に出会って。

 時には別れも経験して。

 私もちょっとは大人になったかなって思う、今日この頃です。


 はやいもので、あれからもう半年も経つんだね。


 夏の日にナータに見送られてから、秋が過ぎ、冬が過ぎました。

 間もなく私は新代エインシャント神国に到着します。


 ミドワルトの残存エヴィルの活動は、ますます活性化しているように思えます。

 戦いは激しくなる一方で、危険な目に遭う回数も多くなりました。

 でも、私は元気でやってるから、心配しないでね。


 新代エインシャント神国に到着して……

 それからどうするかは、まだ決まってないんだけど。

 世界が平和になるためのお手伝いができたら、輝術師のはしくれとして嬉しいなって思います。


 それから、それからね。

 えっと……


 ううん、ごめん。

 話したいことが多すぎて、何を書いていいか迷っちゃう。

 なので、積もる話は帰ってから直接しよう。


 短い手紙でごめんなさい。

 フィリア市には平和が続いていることを心から願っています。

 王国の輝士さんたち、ベラお姉ちゃんたちも頑張ってくれてるから、大丈夫だって信じてるけど。


 私も早くナータに会いたいよ。

 絶対に、ぜったいに無事に帰るからね。

 お互いに元気な姿を見せ合えるといいね。


 ナータ、大好きだよ。


 大親友のルーチェより。




   ※


 しばらく途切れていた日記代わりの手紙を書き終え、私は筆を置いた。


 私たちがいるのは大陸の西端に近い小さな村。

 ここから馬車で二日ほど北に向かった場所に大きな港町がある。

 そして、そこでいよいよ新代エインシャント神国へと向かう船に乗るんだ。


 ミドワルト北西の、大陸から離れた島国。

 輝術王国とも言われる五大国の一つ。


 そこは対エヴィルの最前線。

 私たちだけじゃなく、世界中から魔動乱の再発を阻止しようとする人が集まっている。


 もうすぐ私たちは旅のゴールに辿り着く。


「おーい、ルー。そろそろ出発するって」


 ジュストくんが私を呼ぶ声が聞こえた。

 太陽はすっかり昇りきって、今日もいい旅日和だ。


「はーい、いまいくーっ」


 返事をして、手紙とペンを鞄の中に詰め込む。

 思い起こせば、彼を追ってフィリア市を飛び出した時から、この長い旅は始まったんだよなぁ。


 あの時もそれなりに覚悟してたつもりだったけど、まさかこんなところにまで来るなんて考えてもいなかった。

 去年の今頃は、外のことなんか何にも知らないただの学生だったのにね。


 鞄を肩にかけ、個室のドアを開ける。

 さあ、今日も一日がんばろう! 

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