童話「マミちゃんとおばあちゃん」

@SyakujiiOusin

第1話

          童話「マミちゃんとおばあちゃん」


                             百神井 応身


 マミちゃんは、おばあちゃんのことが大好きです。いつもにこにこしていて、優しく頭を撫でてくれたり、抱きしめてくれたりして可愛がってくれるからです。

 夜になって寝るときも、お母さんには内緒で、おばあちゃんのお布団にもぐりこんでしまいます。眠るまで、昔のおとぎ話を聞かせてくれるのです。

 おばあちゃんは、いつも身づくろいをきちんとしていて、きれいでした。

 そんな大好きなおばあちゃんなのですが、ときどき怖い顔をすることがありました。

「あなたは女の子なんだから、大きくなったときのために、お作法は小さいうちにきちんと身につけておかねばならないのよ」というのです。

 マミちゃんは、「めんどくさいなあ」と思うのですが、大好きなおばあちゃんの言うことだから素直に聞くようにしていました。

 初めて注意されたのは、お部屋の畳のヘリをを踏んで歩いたときです。

「マミちゃん。畳のヘリは踏まないのよ。今はどこのおうちにも畳はあるけれど、昔はとっても高価なものだったの。だから畳のお部屋があるのは、身分の高い方のところだけだったのよ。そういう偉い人のおうちには家紋というマークが決まっていて、畳のヘリには家紋の模様がついていたの。家紋を踏んで歩くのは、マミちゃんのお顔を踏みつけて歩くのと同じことになるのよ。自分のお顔を足で踏まれたら嫌でしょ」そう言って、教えてくれたのです。

「はい、これから気を付けるようにします」元気なお返事を聞いて、おばあちゃんはニコニコ顔になりました。

 マミちゃんは、元気な子です。外から帰ってくると、靴を玄関に脱ぎ散らかしてお部屋にかけあがりました。

 それを見ていたお祖母ちゃんが言いました。

「マミちゃん、ちょっとこっちへいらっしゃい。靴を脱ぎ散らかすのは、お行儀が悪いことなの。脱いだ履物は、揃えて下駄箱の近くに置くようにしましょうね。そこが下座ということなのよ。まだ小さいから、上座とか下座とか難しいことはわからなくてもいいわ。それは段々にわかってくることだから。でも揃えて脱ぐようにしましょうね」


 マミちゃんは、お客様がくると、ほめられます。きちんと坐ってお辞儀するからです。

「いらっしゃいませ」とご挨拶もします。

 小さい子なのによくできると、お客様が感心してしまうのです。

 おばあちゃんのお陰で、お箸の持ち方も覚えました。

 言われたことができるようになると、おばあちゃんは「マミちゃんはエライわね」といって頭を撫でてほめてくれます。

 何でも知っていて、優しく教えてくれるお祖母ちゃんが、マミちゃんは大好きです。

 きっと上品な良いお嬢さんに育つにちがいありません。

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