第2話 少女になったドラゴンさん

「おにーちゃーん?ただいまー」


「お、帰ったのか。ティアナ」


 幼い声で、俺にただいまを言うのは『ティアナ・フォン・ビブリオテーク』俺の7つ歳下の妹だ。茶髪のツインテールをユラユラ揺らし、愛らしい表情を向ける姿は可愛いの一言だ。


「なにそのとかげー?可愛いねー!」


「トカゲだと?!だから我はうわぁぁぁあぁあ!!」


 名乗る前に、ティアナが尻尾を掴んで、プラプラさせて遊び始めた。尻尾切れればよかったなぁドラゴンくんよ。


「やっぱりただのトカゲなんじゃない?ティアナに遊ばれてるわよ」


「だよなぁ...ヘブンズロードって、おばあちゃん達が討伐したし。それにあんなに弱っちいはずないよなぁ...」


「それー!飛んでけー!」


 ティアナが、自称ドラゴンをグルグル回し、投げて遊んでいる。エネルギーが乗ったドラゴンは、弧を描いて処分予定の本の山にぶつかる。


「あんまりいじめるなよティアナ。」


 また自称ドラゴンの方に駆け寄るティアナを横目に、一応注意を促す。ちっさくても、見た目はドラゴンだ。もしかすると...があるかもしれない。


 その時、魔法の詠唱が聞こえる。高等技術である『高速詠唱』で唱えられた魔法。魔力が形を変え、エネルギーを生み出し、現実に干渉する。魔法を使ったのはドラゴンだ。ティアナの小さい悲鳴が耳に入る。


「しまった!ティアナ!」


 恐らく、ティアナがやり過ぎたんだ。怒ったドラゴンが、ティアナを始末しようとしたのかもしれない。モクモクと煙が立ち上る方へ走ると、尻餅をついたティアナと、もう1つ人影が。


「フッフーン!この姿なら、貴様も手出しできまい!」


 そこに立っていたのは、真っ白な肌と髪を持つ、美少女だった。黄金の瞳は美しく輝き、女性の魅力を詰め込んだような体は、どんな男性も虜になってしまいそうだ。まさに天使のような少女がそこにいた。



     『全裸』で....




「ハ、ハルトは見ちゃダメ!」


「うおっ?!何すんだよ!」


 エリカが咄嗟に、両手で俺の目を覆う。あまりに可愛いので、ジッと見てしまっていたようだ。


「どうした?我の美しさにもっと酔いしれても良いのだぞ?」


「はわぁー...トカゲさんが女の子になっちゃった...」


 驚きの表情がまだ戻らないティアナは、まだ床にペタンと座っている。


「とりあえず...とりあえず服を!服を着ろぉぉ!」


 俺の目から手を離したエリカは、自分の上着を少女に投げつける。投げられた上着は、少女の顔面に直撃した。

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