楽な世界など存在しない

@Katabo

プロローグ

 ある男がこの世界にいた。そして彼は決断した。


 気がつくと、部屋の中から縄を探していた


 クローゼットの箱から見つけたその縄を輪にする。


 それを天井へ吊りかけ、その下に椅子を置く。


 全ての準備は整った。


 異世界に行ってみたい。それが彼の思いだった。


 別に不自由な生活をしていたわけじゃない。でも将来に対する漠然とした不安があった。


 椅子に登り、首に輪をかけたが、なかなか決心がつかない。それどころか心臓がバクバク動き、死を恐れているよ感じがあった。


 そして椅子を、勢いよく蹴り飛ばした。


 その瞬間、首が圧迫され、血管が閉塞し、脳に血流が行かなくなる。同時に呼吸ができなくなるが、苦しいということは感じない。


 次第に視界が激しい光に包まれ、脳に残留していた酸素が使い果たされ、気を失った。

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