南森支店 妖書取扱書店
5月頭痛
ハッピー夏日記
第1話
「金次郎連れねーよなー」
「ねぇ、なんであの子を金次郎って呼んでるんだ?」
「だって、あいつ帰る時いっつも本読んでるんだもん。ランドセル背負いながら本読んでるとめっちゃ二宮金次郎に似てんじゃん。
苗字も二宮だし」
ただ、それだけだった。
本を一つ読み終えて、ランドセルに本をしまおうとしただけ。
それだけで、道の隙間に変なものを見つけると思わないだろう。
帰り道の住宅街の、すきまがたまに気になっていた。本を読む横目で一瞬見ることもよくあった。
それがいま、何故か鳥居がある。鳥居が通るはずの道は、なぜかドアが取り付けられており、通ることが出来ない。
ドアは引き戸になっているようで、戸を横に動かすと、いとも簡単に空いた。
「……鍵かけてないやつが悪いんだよな」
と、オレはニヤリと笑ったと思う。オレはドアを開けると、その中を意気揚々に歩き始めた。
中は和風な石畳になっており、隙間には白い石砂利が積まれている。結構歩くと、その道は四方にわかれていた。
北と西と東に道がひとつずつ。だけど、オレは北にまっすぐ進む道の看板に心を奪われていた。
『この先、妖書取扱書店 南森町支部』
書店、本屋のことだ!
しかも、妖書とはどのような本なのだろう。
俺は走って北へ向かっていった。
道の先には、大きな和風の家があった。
家の外では、男の人が掃き掃除をしていた。
「…君、人間だよね?」
男の人はオレを見つけると言った。
男の人は大学生と言ったような見た目だ。
赤く長い髪が印象的な、なんとも人の良さそうな男の人だ。
それに、遠目で言って見て綺麗な類の男の人です。
「人間以外も来るんですか?」
「いやいやいや、ここ妖怪専用だから!どうやって入ってきたの…」
男の人はため息をついた。
気苦労が多そうな男の人だ。
「妖書取扱書店ってここですか?」
オレは精一杯笑顔を作って聞いた。
「そうだけど!とにかく人間は帰りなさい!」
男の人はオレの肩を掴むと、南の方へ向けさせた。
この人が妖怪だとしたら、人間を食べる類ではなさそうだな。
「まぁまぁ、みすずさん。ちょっとだけならいいじゃないですか」
家の中からまた男の人が出てきた。
今度は打って変わって中学3年生くらいの男の人だ。
黒髪のボサボサした髪がとても印象的だ。
オレもああいう中学生になるのだろうか。
みすずさん?と言われた赤髪の男の人はため息をつくと、オレに向き合った。
「いい?ちょっと見たら帰るんだよ!わかった?」
ちょっと高い声がみすずさんから聞こえる。
オレはそっとお礼をいうと、書店の中へ入っていった。
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