伊豆半島冒険忌憚
龍心
座敷わらし
小学校低学年時代の話
夢かもしれないと 子供頃には思ってた
我が家の家族と
母親の姉家族で
伊豆半島の温泉宿に
2泊の温泉旅行
海が見える部屋
磯の香りと硫黄の混じる温泉 小学生の俺には 贅沢な温泉だった
姉夫婦には 子供はおらず 俺の事を自分の子供のように可愛がって貰っていた
そんな旅行を みんなが楽しんでいた
温泉を一通り満喫し 旅の疲れを洗い流し
豪華な お刺身 旬の山の幸 どれも食べきれないほどの量の豪華な料理が テーブルいっぱいに隙間無く並べられる 染みわたる幸福と 噛み締める口福を俺たちは存分に楽しんだ!!
歓喜に満ちた宴も終焉を迎え 家族毎に取った部屋に帰り 眠る準備をする 子供だった俺は テレビを見ながら一人就寝にに向け 親たちは隣の部屋で酒盛りを楽しむといった流れだった
一人残された俺は 冷蔵庫のオレンジジュースを飲みながらテレビを見る やがて眠くなり テレビを消す 部屋の灯りは付けたまま 眠りを待つ 共働きの両親を持つ小学生の俺はこれが日常だった やがて静かに時が過ぎて 沈黙が部屋を包んだ すると部屋の中から 小さな声が聞こえる 「遊ぼーよ 遊ぼー」
最初は聞き取れなかったが 微かに聞こえる 俺は部屋に三つ並べられた布団をめくり 内風呂を調べ 声の出所を見付けようとした 隣の部屋の両親が呼んでるのかと思い 隣にも行くが 早く寝ろと叱られる しぶしぶ自室に戻るが まだ声は聞こえる おもむろに冷蔵庫を開けて見た そこには 市松人形らしき物 正確には おかっぱ頭 和服と言うか 着物の人形と言うか 小さな物体? 妖精?みたいなのが そこにいた その物体は「遊ぼーよ!!」と俺を誘っているのだ ここから眠るまでの間 何をするわけでも無く 遊ぶのだが 何をしたのかは覚えて無い 眠気も半分あってすぐに眠りに付いたかもしれないが 確かに遊んだのは覚えている幼少期の記憶だ
時は過ぎて 大人なになり その不思議な体験をした 宿に行こうと思った オヤジに伊豆半島の この辺りと話を聞き 宿を探る 探すのには苦労しなかった 記憶を辿り あっさり宿は見つかったのだ シーズンオフもあり予約も入れてないが 部屋は空いてるとの事…
フロントに 人形が置いてあった 幼少期の記憶が蘇る
宿の方に 話を聞くと
この辺りに伝わる 座敷わらしの人形だと言う
記憶が繋がった 俺は小学生の頃この座敷わらしと 遊んだ記憶がある!! そして思い出した事… また遊ぼうと言われた事 30年以上の時は経ってるが まだ座敷わらしが俺の事覚えてるかどうかはわからないが 寝る時に オレンジジュースを一つ開けて置いといた
やがて 爽やかな朝を迎えるが
オレンジジュースはそのままだった
俺は 宿の贅沢な朝食を始めとして平らげ
伊豆を楽しもうと 車を走らせた
夕方には もう一度温泉に入り 埼玉まで戻ろうと計画を立てた
どうせなら 海鮮丼を食べようと 港近くの定食屋に入る
舌鼓を打ちながら 極上の満足感を覚え 完食 海の幸に感謝しながら ビーチを探す ちょっと季節はずれではあるが 裸足になり楽しんでいた 当然ひとりで海は悲しいのでそそくさと退散する 間も持たないので ちょっとはやいが 温泉を探す 夕方から入ろうとしたが 良さげな場所が無かったので 予定を早め そのまま帰ろうと 有料道路にさしかかる 海岸線を走る有料道路 土産物屋が並んで 見晴台みたいなのもあった
ガラでもないけど
カーステレオから サザンの真夏の果実をかけながら 窓を全開「また来るぞ~」って叫んでみた!!
その瞬間 耳元で
「絶対だよ 約束だよ!!」と 幼い声が聞こえた
俺はフルブレーキ
辺りを見渡す
気のせいかと言い聞かせ
家路を急ぐ
なんだかんだで
埼玉に付く頃には良い時間になっていた
腹も減ったので
一人旅の締めくくりに
ラーメン屋に入る
出されたコップは二つだった
伊豆半島冒険忌憚 龍心 @ryuushin
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