消せない罪
「あ、美彩さん? 今ドナー登録完了しました! はい、美彩さんのお陰です。俺バカだから、最長って言われた4ヶ月かかっちゃいましたけど」
血液検査の結果、そのあとの選考。
選考後にも健康診断があるらしいが、この10年行っていなかったので検査前に受けに行った。
選考待ちのときに結果が届いたが、何の異常もなく、むしろ寂しいくらい平常数値だった。
毎週、決まった時間に会うようになった。
……1ヶ月たった頃、少しずつ美彩さんの帰宅が早くなった。
体調が芳しくないらしい。早く早く……。
3ヶ月目で2週に一回になり、今は自宅療養。
確実に悪化している。
だから、早く伝えたかった。
健康診断して採血して、2ヶ月前後まだある。
内臓器官なら生きてても提供出来るんだよな。
……俺は、彼女に損傷部位を聞いていなかった。
□□□□□
「美彩さん! 聞いてください! あとは査定待ちです! ……え?! わかりました! 切らないで待ってて! 」
俺は血の気が引いた。
調子がいいから今日は会ってくれようとしていた。
病院の前で連絡を待っていたら、車らしきものに数人で押し込められ、どこかに置き去りにされたらしい。
彼女を盲目と知っての犯行か?! 早く見つけ出さなくては!
GPSを起動した瞬間、動けなくなった。
……奇しくも、あの事故現場だった。
だが、迷っている暇はない。あのことを知っている誰かの犯行かもしれない。
人質に美彩さんを取るなんて許せない。
報いならば、甘んじて受けてやる。
□□□□□
「美彩さん! 美彩さん! 」
小雨が降り始めた山中を走り回る。
この辺りのはず……。そう頭を巡らせた瞬間、俺は誰かに押され、真っ逆さまに落ちた。
人影が見える。あれは……。
「……ありがとう、お兄ちゃん」
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