拷問探偵は必ず犯人を逃さない

ちびまるフォイ

あとは警察が上手くまとめます。

俺の名前は高校生探偵・江戸一(えどいち)。

ひとよんで拷問探偵。


今回も絶海の孤島にある旅館で殺人が起きてしまった。


「全員、動かないでください!

 いいですか、この旅館には私達だけしかいません」


「それじゃこの中に犯人がいるっていうのか!」

「そういうのは警察に任せればいいじゃない!」

「そうだ、あとで警察も合流するんだろう!?」


「ええ、ですが警察到着までに時間があります。

 証拠隠滅をされる危険性も高い。

 なので、私が犯人を見つけましょう」


いつも肌身離さず持ち歩く大きなキャリーケースを開く。

中には金属製の拷問器具がガラガラと出てきた。


「この拷問探偵の名にかけて!!」



「拷問するってことは自白させるのか!」

「もう犯人がわかったのね!」


「いいえ、さっぱりわかりません」


「それじゃ怪しい人物がわかったとか?」

「犯行の手口くらいは掴んでいるんだろう」


「だから、それをこれから拷問で調べていくんじゃないですか。

 みなさん、どうかお知恵を貸してください」


拷問探偵は居合わせた人々を固定すると、拷問を仕掛け始めた。


「痛い痛い!! なにするんだよ!!」


「さぁ、教えてください! どうすればこの密室で犯行ができるんですか!」


「犯人じゃないのに知るわけ無いだろう!」

「だったら推理してくださいよ!」


「ぎゃあああ!! わかったわかった! ほら! 窓からとか!

 ワイヤーを使って、なんやかんやすれば、密室ができるだろう」


「なるほど!!」


拷問探偵は得た情報をすぐさまメモに残していく。

拷問のはてに放り出された突飛なアイデアだがヒントになりうるのを知っていた。


「犯行時刻のアリバイを教えてください!」


「ひぎゃああ! その時間は部屋にいたよ!!」


「証明する方法は!?」

「なんでも話す! 部屋に痕跡があるはずだ!! だから勘弁してくれ!!」


 ・

 ・

 ・


PTAからの熱烈な苦情を配慮して以降の拷問シーンはカットされ、

全員を拷問にかけた拷問探偵は再びフロアに人を集めた。


「みなさん、ご協力ありがとうございました。

 アリバイ、犯行方法、怪しい人物、あらゆる些細なことも

 拷問にかけたことで洗いざらい証言してもらいました」


「それじゃ……!」


「ええ、犯人がわかったんです」


拷問探偵は犯人に指を指した。


「犯人はあなたです! 屋根裏に潜んでいた忍者さん!!」


「な、なにぃ!?」


油断していた忍者は天井を踏み外して落下した。


「ククク。よくぞ私の存在にたどり着いたな。褒めてやろう。

 拷問による証言というのもあなどれんな」


「認めるんですね」


「いいや、それは違う。認めると言っていない。

 そもそも拷問による証言がどれだけあてになるというんだ?」


「なんだって?」


「早く拷問から逃れたいばかりにとっさに出た嘘かもしれない。

 拷問をかけてアリバイを確認したやつこそ犯人かも知れないだろう」


全員はたしかにとお互いを見合わせた。


「証拠はあるのかよ、決定的な証拠は!」


「ありますとも」


「ほう見せてもらおうか。いったいどこにあるんだ?」



「あなたの、心の中です」


「……嫌な予感」


忍者は拷問探偵に取り押さえられると、再び拷問が開始された。


「さぁ! 教えてください! 証拠はなんですか!?」


「痛い痛い痛い!! やめてくれぇぇ!! それくらい推理しろよーー!」


「俺はググっても答えが出ないことを調べるのは嫌いなんだ!」

「それでも探偵かぁーー!!」


忍者をしこたま拷問した探偵だったが、

ついに証拠らしい証拠を掴むことはできなかった。


「なんてしぶといやつだ……」


「探偵さんよ、忍者をなめてもらっちゃ困る。

 こちとら拷問訓練も受けているんでね。

 まして、自分が不利になる証拠を痛みで自白するわけないだろう」


「あれを使うしか無いか……!」


「探偵ちゃん! まさか、あれを使うの!?」


ポッと出の幼馴染は禁断の方法を試す探偵を止めた。

しかし、拷問探偵は止まらない。


「貴様、なにをする気だ!?」


忍者もその光景に言葉をなくした。

拷問探偵は自らを拷問し始めた。


「ぐあああああ!! 痛ぇぇぇぇ!」


「バカなのか!? こいつはバカなのか!?」


「いいえ、拷問探偵ちゃんの本当の力はここからよ。

 自分を拷問にかけてピンチになることで、眠っていた脳が活性化し

 圧倒的な推理力を発揮するとコメントしてください」


「カンペの最後のは読まなくていい」


「うおおおおおおおおお!!!」


拷問はなお一層の激しさを増し、拷問探偵の目には光が灯った。

拷問器具から解放された探偵は満身創痍の状態になっていた。


「わかりましたよ……この事件の解決方法が……!」


「な、なんだと! 私にこれ以上拷問しても無駄だ!

 絶対に証拠なんて教えないし、すでに必要なものは処分してある!」


それでも拷問探偵は拷問器具を手にとった。


「無駄だと言っているだろう! 私にこれ以上の拷問は無駄だ!」


「これで、事件解決だーーーー!!」


拷問探偵は拷問器具を忍者ではなく、警察に取り付けた。



「ぎゃああ! わかった! わかった!

 こいつを犯人として逮捕すれば良いんだろう!?

 証拠はこっちででっちあげるから、早く解放してくれぇぇぇーーー!!」

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