死闘、それは踊るように 2

 やはりこの世界では、自動防御フィールドじゃ効果が薄いみたいだ……やっぱイバライトのエネルギーが下がって……!クソ!いってぇ!


「だんな様!」


「問題無い!」


 俺が吹き飛ばされた瞬間、炎を纏った竜巻がペイグマリオンを直撃する。どうやら金髪の女性とアネモネさんの合体攻撃らしい。


 しかし、ペイグマリオンの紅い光に飲み込まれ攻撃は届かない。あれは一体……。


《ダイゴ、カシマ、あの紅い光は何だ? さっきから攻撃が飲まれてる》


《先程から、フェイズガンもダガーも通りませんわ》


《紅い光は亜空間に繋がっています。内部にまだ人形のストックがある可能性が》


 ダイゴが空中から放つ大量の光弾、フェイズライフルの連射モードだ。分解した人形は高出力モードで追討ちを受け蒸発していく。明らかに今までの彼の動きでは無い。やるねぇ!


 一方カシマは、ストレプトカーパスと共にペイグマリオンに接近戦を挑んでいる。光子ダガーを両手で扱うその姿は、まるで舞を舞うかのような美しい動きだ。


 さてどうしたものか。混乱する戦場、大量殺戮を行うクソ強いリベレーター、この後俺を逮捕しに来るコントローラーズ。多分、倒す事は出来る。だが多分それではダメなのだろう。


 俺は考えたが……わからん!とりあえずなるようになるさ。人形は大元を倒せば消えるってのがお約束だろ? 多分……。


《二人とも、ペイグマリオンに集中するぞ。牽制してくれ》


《Y》 《了解》


 鉾を構え、ペイグマリオンに突撃する。大振りを仰け反るように回避され、更に切り返しで放った斬撃をジャンプして避けられる。同時にダイゴによって連射された光弾と、ストレプトカーパスの放つレーザーがペイグマリオンの亜空間に吸い込まれていく。


クソが!


 広範囲の足場を泥に変換し、ペイグマリオンの足場を不安定にするも、泥の上で姿勢を崩すどころかスケートをするように滑り、ダイゴを掌底で吹っ飛ばしている。ダイゴは即座に立て直し、引き続き戦闘を続行する。丁度近くにいたストレプトカーパスに話しかける。


「なぁ、ちょっと協力してくれないか? 」


「協力ですか? ……いいでしょう。その後逮捕です」


 ストレプトカーパスは一瞬考えた様子だったが、笑顔で返事を返してきた。何故そのタイミングで笑顔なんだ。怖いわ。


「いいか、あの紅いのは亜空間だ。そこに攻撃を流されて倒せない。だからあの亜空間の亀裂より広範囲を囲って、丸ごと潰す」


 先程見たアネモネの技術の応用だ。


「だから一度でいい、奴を怯ませてくれ。君なら出来るだろう?」


「耳を塞いどいて下さいね? 」


 ストレプトカーパスは周囲に通信したのだろうか、金髪の炎使いが戦場から即座に離脱する。


《ダイゴ、カシマ、爆音で奴を止める。対音響防御! 離れろ!》


 ダイゴとカシマは牽制射撃を続け、相手を釘付けにしつつ後退する。


「アネモネ先輩! 攻撃パターンβを使います! 」


「あいよっ!」


 コントローラーズの二人が、武器をくるりと回している。


「私は、見捨てられた」

「この囁きに、耳を傾けて! 」


「「ハウリング! 」」


 ペイグマリオンに対し、目で見える程の風の道筋が出来あがり、音を出したであろうストレプトカーパスが反動で後ろに吹き飛ぶ。無音だと思いきや、ペイグマリオンの後ろ、海の向こうからとんでもない爆音が鳴り響く。空気で指向性を作ったのか?


 うわぁ、音量ヤバそう……攻撃を食らったであろうペイグマリオンは、耳から血を流しつつ目をパチクリさせ、頭と身体をガチガチ震わせている。これ普通死ぬんじゃないか? 足止め所じゃねぇなおい……。


 その隙をつき、守谷の力をペイグマリオンの周囲に展開、フィールドを即座に狭めて相手を拘束する。


「ばなすすええ!ごおだごどもべぇぇええ! 」


「すまんな! 何言ってるかさっぱりわからん! 」


「ヌァァァァァァァァァ! 」


 こっそりと古河の能力「古」を発動し、密かにペイグマリオンを放り込む。


 終わった。まずは。


「終わったんですか……? 」


 ストレプトカーパスが疲れ切った表情で膝をつく。どうやら相当体力を使ったらしい。


「さて、皆、まずはお疲れ様。今見てきたのだけれど、サントリナとユーパトリム、ついでにデンドロビウムがいないわ。どこにも」


 俺が治療の為に放り投げた三人か。


「えっと、その三人は今治療中です。もう少々お待ちを……? 」


 怖い、この金髪明らかに危険そうな雰囲気だ。なんと言うか目が死んでるような、絶対頑固そうな感じだ。このまま行くと逮捕されて脳みそとサヨウナラだ!まずいぞ。


 ダイゴとカシマは俺を護るように立つ。一食触発だ。


「治療? なぜ侵入者の貴方が? そもそも貴方、その力は何? オムニフラグメント由来の力では無いようだけど」


「オムニフラグメント? 」


「その反応は……リベレーターですらない? 貴方は一体、どこから来たの? 」


…………チーン!


 気のせいかもしれないが、電子レンジが温め終わったような音が、周囲に鳴り響いたようなきがした。


「そして、この気の抜けるような音は何? 」


 うん。幻聴じゃなかったようだ。


「グエッ! 」「イタッ! 」「グフッ! 」


 俺と金髪との間に、先程「明」に放り込んだ三人が空中に作り出されたゲートから落ちてくる。先程の腕を切断されていた女性もいたが、なんと腕が復活していた。


 マジかよ!?すげぇ回復力だ!


 でもなんで上から?

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