私の知らないあなた(17)
どのみち優斗は助からない。優斗に選択肢はない。
でも、私にはある。
生と死、二つの選択肢が。
このまま優斗のいない世界に一人で下りていくのか、それとも。
私は山の上をふり返った。
優斗のいるところに私も一緒に行くか。
答えは簡単にでた。
迷いはなかった。
優斗はきっと激しく怒るだろう。
こんなになるのだったら雪山に登ったりしなければよかったと。
雫はほんとうに馬鹿だと。
雪の中に沈むように横たわる優斗はなにも言わなかった。
優斗の長い睫毛についた雪を丁寧にはらう。
目を閉じた優斗の顔は怒っているどころかむしろ微笑んでいた。
「私、戻ってきちゃった」
優斗は目を閉じたまま動かない。
「怒らないの?優斗」
私は優斗の体を動かし、腕枕をしてもらうようなかたちで寄り添い横たわった。
「優斗、不安だったんだよね、怖かったんだよね、でももう安心だよね。私も一緒だよ。いつだったか優斗は教えてくれたよね、私の名前の意味を。言ってくれたよね、私はほんとうはとっても強いんだって。違うよ優斗。私は優斗のためになら強くなれるけど、優斗がいなきゃ駄目なの。優斗なしで一人で強く生きてなんかいきたくない。優斗がいない世界は不安で怖くてどうしようもないの。だから私も一緒に連れて行って。優斗と一緒だったらどんなことでも大丈夫だもん」
優斗の胸に頭をもたせかけ目を閉じる。
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