2.壊れた世界と秘密の話

名取

プロローグ




 どうしてこんなことになってしまったのか——




 舞い散る血飛沫と、焼け付くような胸の痛み。


 世界がゆっくりと動き、右手から銃がこぼれ落ちた。


 ああ、本当にどうしてこんなことに……


「ごめんね、お兄さん」


 背後から、獲物だったはずの男が囁く声が聞こえた。

「君に恨みはないけど、これも仕事だから」

 首に当たる刃の冷たさに、諦めて、空を仰ぐ。星ひとつない都会の夜空を彩るように、赤い血がまた飛び散った。


 ああ。


 薄れていく意識の中で、俺は生まれて初めて、泣きたいような気持ちになる。

 こんなことになるのなら、あの時、あいつにちゃんと話してやればよかった。


 俺のずっと隠していた、秘密の話を。

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