Radio

染野聖

エピソード 1 ラジオ 

私たちはもう忘れているかもしれない・・・


遠い昔の声の記憶を・・・



・・・・・・・・・・



かつてラジオ局という音声だけのメディアがあった。


今ではインターネットラジオ局が主流である。


電波で音声を送る方法は過去の遺物となっていた。



・・・・・・・・・



今日は良い天気だ。


部屋の整理それを何十年ぶりかに始めた、たぶん最後になるだろう。


おしいれの奥から、昔集めたベリカードを整理したアルバムを発見!


どうしても当時ほしかったカードがあったんだよな・・・


B局のカード、女の子の裸?でも胸は隠してあるが、当時としては斬新だった。


「久しぶり~」


何・・・今の声?


また聴こえた・・・「久しぶり~」



それは、1970年代後半のカードからの声だった。


そう、その半裸のような女の子からの声である。


「最近ラジオ聴いてるの?」とカードの女の子。


「いや、聴いてない」と私。


「なぜ」


「あれから60年たっている、世の中かわった・・・」


「どういうこと?」


「もう電波で放送するラジオは存在しないんだよ」


「・・・・」理解できないようである。


「ラジオ局は昔は星の数ほど沢山あっただろ、今は両手で数えるほどしかないんだ」


「・・・・」


「インターネット放送にかたちを変えているんだ」


「そう・・・・」理解不能・・・


それから女の子は黙ってしまった・・・。



・・・・・・・・



整理がある程度目処だ付いたころ、木製のアナログラジオが出てきた。


当然周波数を合わせても聴こえるわけでもないのだが・・・。


私はそれを、ベッドの脇の机に置き眠りに付いた。



夢・・「あした、そのラジオをつけなさい」例の女の子の声だ。


夢・・「えっ?」と私。


夢・・「最後に・・・」



そして朝になり目が覚めた。



・・・・・・・・・



夢で言われたとおりラジオの電源を入れる。


周波数113○khz付近


ザーザー何も聴こえない、聴こえるはずも無い。



そのとき、「ラジオネーム ねこさんからのお葉書が届きました!いらっしゃ~い」


聴こえたような気がした。


私は目を閉じた。


また聴こえた「ラジオネーム ねこさんからのお葉書が届きました!いらっしゃ~い」



若かりし頃私は、パーソナリティ狭山まさしの、Sayと言う番組に夢中だったなあ。


再び目を閉じた・・・。



もうこの世に狭山まさしはいない、番組Sayも同様・・・


でも私は幸せであった、再びラジオの番組を聴ける事を、永遠に聴ける事を・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Radio 染野聖 @somesei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ