第11話.ゴミ捨て場
「はぁ・・・・」
ゴミ袋が意外と重い。結んでいる手提げの部分が重さに負けて細く伸び、指に食い込んでくる。普段運動なんてしない僕にとって学校の体育なんかよりよっぽどきつい。
ヒィヒィ言いながらゴミ捨て場まで辿り着くとこの前豆板醤の場所を教えた女の子がいた。少し驚いたが姉ちゃんの言った通り最近引っ越して来たというサワダサンだろうか。
しばらくすると向こうも僕に気付いたらしく、軽く会釈をしてきた。会釈を返しながらゴミ袋をゴミ捨て場に投げる。ようやくあの重たい持ち物から解放された。腕が異常なほど軽く感じた。
「あの、この前はありがとうございました」
疲れたしサッサと帰ろうと体の向きを変えた時、背中越しに女の子の声が聞こえた。まさか、覚えていたのか、律儀な人だな。女の子の方に向きを変える。
女の子はこの前と同じ紺色の長袖のシャツに、ズボンは少しダボっとしたスウェット? というんだろうか、そういうものを履いていた。
「いえ、ハァ・・・・気にないで、ハァ・・・・ください」
息切れしながらもなんとか返答する。汗ばむ体で息も絶え絶え、ものすごくカッコ悪いに違いない。
続いて「サワダサンですか?」 と聞こうかと思ったが、やめておいた。知らない人が自分の名前を知っていたら驚くだろうし、なにより人違いだったら恥ずかしすぎる。あと、できれば早く帰って冷房の効いた部屋で涼みたい。
「あの、高校はどこですか?」
帰ろうとすると向こうから今度は質問が飛んできた。早く帰りたかったので少し面倒だなと思いつつも答える。
「連禱高校です」
少し女の子の表情が変わったようにも思えたが、辺りが暗かったのと長い前髪で表情が読み取り辛いせいでよく分からなかった。
「担任は誰ですか?」
早く帰してほしいのに矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「香山先生です」
そこまで答えると女の子はしばらく沈黙した。なにかまずいことでも言っただろうか? ついさっきの記憶をどれだけ掘り返しても、質問に答えていただけで特に言葉を付け足したりもしなかったのでまったく心当たりがない。
「じゃあ僕は帰ります」
なんとも言えない気まずさを感じたので早々に立ち去ることにした。「あ、はい」 と短く返事が返ってきただけで続きもなさそうだったのでその場を後にした。
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